畑山 要介(はたやま ようすけ)
研究紹介
持続可能な社会の仕組みについて、社会システム論や文化社会学の観点から理論的・実証的に探究しています。個人の自由にもとづきながら環境や社会に配慮する社会はいかにして可能か。人々の「豊かさ」の意味がどのように変容しているのか。こうした問いのもと、生産・流通・消費における自己制御メカニズムについて考えるとともに、統計調査やフィールドワークをもとに経験的な分析を進めています。
テーマ1:社会秩序の形成をめぐる理論的研究
概要
M.ウェーバーやN.ルーマンの社会学理論を研究しながら、社会秩序の形成について探究しています。合意や規範の共有によって社会秩序が成立するという同一性の原理ではなく、異質な価値観や考えを持つ人々がそれぞれの仕方で結びつくことで社会秩序が成立するという差異の原理で社会現象を捉える理論の探究です。それは全体による個人の自由の制約としてではなく、個人の自由の結果として社会が成立しているということです。自由であるということは規則に従わないということではなく、人それぞれの仕方で規則に従っているということです。そのそれぞれの規則の従い方を理解することで、自由と規範の問題にアプローチするのが本研究です。
主な業績
畑山要介, 2016, 『倫理的市場の経済社会学ーー自生的秩序とフェアトレード』学文社.
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テーマ2:消費社会論の再構成:倫理的消費をめぐる研究
概要
消費文化の観点から倫理的消費(エシカル消費)について研究しています。たとえば途上国の労働者に公正な対価を支払うフェアトレードは欧米を中心に台頭してきましたが、近年では日本でも徐々に普及しつつあります。倫理的消費はその利他性が強調されることが多いですが、しかしそれは必ずしも消費者自身の欲求を制限することによってではなく、むしろロハスやスローライフ、エシカルファッション といった自己のライフスタイルやアイデンティティに対する関心のもとで購入されています。その意味では、倫理的消費はきわめて消費社会的なものであり、また倫理的消費を通じて消費社会のあり方それ自体が転換しているとも言えるでしょう。研究では、こうした観点からフェアトレード消費を経験的に分析するとともに、そこから新たな消費社会論を展望していくことを試みています。
主な業績
Hatayama, Yosuke, 2019 "The Fair Trade Consumer as a Citizen-Consumer: Civic Virtue or Alternative Hedonism? " The Journal of Fair Trade, 1(2): 32 - 39.
畑山要介, 2020, 「倫理的消費ともうひとつの快楽主義――K.ソパーによる消費主義批判の刷新」『経済社会学会年報』 42: 55 - 65.
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テーマ3:企業組織のSDGs行動の研究
概要
SDGsが浸透しつつある今日、企業による社会環境的配慮は利己vs利他という単純な図式では捉えられなくなっています。利益のあり方が変わりつつあると言ってもいいでしょう。持続可能な社会は企業の利害関心の排除ではなく、むしろ利害関心への利他の織り込みによって可能となっているとも言えます。経済のオートポイエティックな自己制御として持続可能な社会の形成を理解する必要があるでしょう。その一つが認証制度を介した自己制御モデルです。研究では具体的な事例として、環境認証やフェアトレード認証による内部制御型の経済制御モデルを取り上げ、それをコーヒー流通業者による倫理的認証の取得について調査を進めるなかで探究しています。
主な業績
畑山要介, 2020, 「経済の自己制御としての社会・環境認証の普及ーーN.ルーマンの機能分化論を通じて」『社会学年報』 49: 39 - 49.
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担当授業科目名(科目コード)
社会学、社会学概説、社会学特論Ⅰ、社会学特論Ⅱ、社会調査法