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広瀬 侑(ひろせ ゆう)

所属 環境・生命工学系
兼務
職名 助教
専門分野 ゲノム生物学、光生物学
学位 理学博士(東京大学)
所属学会 ゲノム微生物学会、光合成学会、植物生理学会、微生物生態学会、生物物理学会
E-mail hirose@ens
※アドレスの末尾に「.tut.ac.jp」を補完してください

研究紹介

 私たちの生きる地球は、身の回りの数mの部分を眺めると石や階段や草木があり、「でこぼこ」しています。次に地球の数kmの部分を眺めてみると、多くの場合は「平面」に見えます。次に地球をロケットから数万kmのスケールで眺めてみると「丸く」見えます。このように地球という物体は、それぞれのスケールで全く違った顔を見せています。さて、このような「でこぼこ」や「平面」や「丸い」という各層の関係には、どのような意味があるのでしょうか?つまり数mで「丸い」、数kmで「でこぼこ」、数万kmで「平面」な地球であったら何か都合が悪いのでしょうか?さて、分子生物学とは、生物個体におけるnm〜μm〜mm~mまでの10の10乗のスケールを超えた「階層のつながり」の理解する学問です。この点が、各階層における現象を最小の変数で近似することを目指す他の自然科学分野の研究とは異なると思います。
 私は、生物の階層性を理解するために、階層構造の比較的シンプルな光受容という現象に着目して研究を行っています。生物の生存は様々な分子の化学反応によって支えられており、それはナノスケールを舞台に進行します。一方、物体の「色」は、その物質を構成する分子の電子軌道の情報と、その大まかな数を情報を与えてくれます。つまり、「色を感じる」ということは「分子を見る」ということに他なりません。分子を見るためには、「光を受容する分子」それを「シグナルとして増幅する仕掛け」が必要であり、その装置はDNAという比較的近い大きさの分子の4種の塩基の配列情報として格納されることで、細胞や世代を超えて受け継がれます。そのため、光受容の研究には次世代シークエンサーと呼ばれる最新のDNA塩基解析装置が威力を発揮します。このように、光受容という現象を理解するためには、物理・生物・化学という異分野の知識を幅広く学ぶ必要があるので、自分の知的好奇心を満たすのに適した研究分野だと思います。

テーマ1:フィトクロム様光スイッチの光色感知機構の解明

概要
図1、光色スイッチ分子の色感知メカニズム

 テトラピロール色素とはピロール環が4つ連なった構造をした分子の総称であり、比較的長い共役二重結合系を持つ事から、紫外から遠赤色光までといった幅広い可視光領域に吸収を持ちます。生物はこれを用いて光エネルギーの捕集や光色の感知を行っています。特に、光合成アンテナであるクロロフィルや、光スイッチ分子であるフィトクロモビリンなどは有名です。私は、補色順化を制御するテトラピロール結合タンパク質を解析する過程で、そのタンパク質の「色」が、溶液の「pH」(水素イオン濃度)を変化させると大きく変化することを、偶然発見しました。この発見を手がかりに、色とpHの関係を詳細に分析したところ、色素の光異性化反応と水素イオン移動を組み合わせることで、緑色光と赤色光を受容することを明らかにしました(Hirose et al 2013 PNAS)(図1)。テトラピロール分子はこれまでに長い研究歴史がありますが、水素イオンにはあまり着目されてこなかったので、まさに目から鱗の発見でした。今後は、水素イオンとテトラピロール色素の発色の関係を詳細に調べて行きたいと考えています。

<参考文献>
Hirose Y., Rockwell N. C., Nishiyama K., Narikawa R., Ukaji Y., Inomata K., Lagarias J. C. and Ikeuchi M.
Green/red cyanobacteriochromes regulate complementary chromatic acclimation via a protochromic photocycle. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 110: 4974-9 (2013)

テーマ2:シアノバクテリアの光スイッチ機構を利用したオプトジェネティクス技術の開発

概要
図2、シアノバクテリアが光色を感知する仕組み(補色順化)の解析

 陸上植物は、青色光と赤色光を吸収するクロロフィルを用いて光合成しますが、シアノバクテリアは、これに加えて緑色光や橙色光といったより多くの光を利用して光合成をします。一部のシアノバクテリアは、周囲に緑色光が多いときは緑色光を吸収する光合成色素タンパク質(フィコエリスリン)をつくり、逆に、赤色光が多いときには赤色光を吸収する光合成色素タンパク質(フィコシアニン)をつくることで、効率よく光合成を行います(図2)。この現象は光合成機能の調節のわかりやすい例として非常に有名ですが、その調節の分子機構は最近まで不明でした。私は、Nostoc punctiforme ATCC 29133とSynechocystis sp. 6803という2つのモデルシアノバクテリアを用いて研究を進め、テトラピロール結合光センサーが緑色光と赤色光を受容し、それが転写因子のリン酸化を介してフィコエリスリンとフィコシアニンの遺伝子発現を制御することを明らかにしてきました(Hirose et al 2008 PNAS; Hirose et al 2010 PNAS)。現在は、これらの光スイッチを用いて生体活動を制御する研究に取り組んでいます。

<参考文献>
Hirose Y., Narikawa R., Katayama M. and Ikeuchi M. Cyanobacteriochrome CcaS regulates phycoerythrin accumulation in Nostoc punctiforme, a group II chromatic adapter. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 107: 8854-8859. (2010)
Hirose Y., Shimada T., Narikawa R., Katayama M. and Ikeuchi M. Cyanobacteriochrome CcaS is the green light receptor that induces the expression of phycobilisome linker protein. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 105: 9528?33. (2008)

テーマ3:次世代シークエンサーを用いたゲノム・トランスクリプトーム解析

概要
図3、豊橋技術科学大学の次世代シークエンサー

解析対象生物のゲノム情報を得ることができれば、遺伝子のクローニング、遺伝子破壊コンストラクトの作製、代謝経路の推定、遺伝子発現解析、質量分析によるタンパク質量同定・・・といった分子生物学の定番手法が使えるようになり、研究の幅が大きく広がります。ここ数年の次世代DNAシークエンサーの急速な普及とコストの低下によって、生物のゲノム情報が容易に得られるようになり、非モデル生物の研究への道が開かれました。豊橋技術科学大学エレクトロニクス先端融合研究所はillumina社 MiSeq、Life technologies社 Ion Protonという2台の次世代DNAシークエンサーが稼動し、私はこれらの装置を用いて国立環境研究所(NIES)のシアノバクテリアの大規模なゲノム解析を進めています。また、学内外の次世代シークエンス解析の依頼も受け付けています。

<参考文献>
Hirose Y., Fujisawa T., Ohtsubo Y., Katayama M., Misawa N., Wakazuki S., Shimura Y., Nakamura Y., Kawachi M., Yoshikawa H., Eki T. and Kanesaki Y.
Complete genome sequence of cyanobacterium Leptolyngbya sp. NIES-3755. Genome Annouc. 4(2). e00090-16. (2016)
Hirose Y., Fujisawa T., Ohtsubo Y., Katayama M., Misawa N., Wakazuki S., Shimura Y., Nakamura Y., Kawachi M., Yoshikawa H., Eki T. and Kanesaki Y.
Complete genome sequence of cyanobacterium Fischerella sp. NIES-3754, providing thermoresistant optogenetic tools. J. Biotechnol. (220) 45-6 (2016)
Hirose Y., Fujisawa T., Ohtsubo Y., Katayama M., Misawa N., Wakazuki S., Shimura Y., Nakamura Y., Kawachi M., Yoshikawa H., Eki T. and Kanesaki Y.
Complete genome sequence of cyanobacterium Nostoc sp. NIES-3756, a potentially useful strain for phytochrome-based bioengineering. J. Biotechnol. (228)51-2, (2016)
他、共同研究含め11報

その他(受賞、学会役員等)

<略歴>
静岡県島田市出身
平成18年3月 北海道大学農学部、生物機能化学科卒
平成20年3月 東京大学大学院総合文化研究科卒業、修士(学術)
平成21年4月 日本学術振興会特別研究員DC2、東京大学大学院総合文化研究科(池内昌彦研究室)
平成22年5月〜10月 優秀若手研究者海外派遣事業特別研究員、U. C. Davis(J. Clark Lagarias研究室)
平成23年3月 東京大学大学院理学系研究科卒業、博士(理学)
平成23年4月 日本学術振興会特別研究員PD、東京大学大学院新領域創成科学研究科(服部正平研究室)
平成23年10月 豊橋技術科学大学、エレクトロニクス先端融合研究所、特任助教
平成25年12月 豊橋技術科学大学、環境・生命工学系、助教(浴俊彦研究室)

<主な受賞歴>
H23年度 東京大学大学院理学系研究科 研究奨励賞
H27年度 ゲノム微生物学会 若手賞
H28年度 文部科学大臣表彰 若手科学者賞


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