研究シーズの泉

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発音改善に役立ちます!

摩擦音発音の空力音響解析に関する研究

ステータス 基礎 実証 実用化準備

概要

歯茎摩擦音とは、日本語のサ行の/s/や/sh/を発音する際に口から発せられる音です。私たちは関東や東北地方の方言などで観察される「ヒ」と「シ」が混同して発音される現象に関して、リアルタイムMRI とスーパーコンピュータを用いた解析により、舌の位置は変えずに舌の左右方向の形状を変化させて発音していることが原因であることを明らかにしました。

従来技術

・静的MRIによる矢状面のみの口腔形状の解析により発音メカニズムを推定
・舌の形状の違いによる気流の流れや音の違いについて,音響モデルにより推定

優位性

・リアルタイムMRIにより,動的な舌形状の変化を観察
・空気の流れと音の発生をスーパーコンピュータにより高精度で予測・解析

特徴

日本人の歯茎硬口蓋摩擦音[ɕ](歯擦音)と硬口蓋摩擦音[ç] (非歯擦音)の調音類似性を解明するために、
(1)MRIによるリアルタイム映像(図1)
(2)無響室での持続した摩擦音発声のスペクトル測定
(3)簡略化した声道モデルに3つの狭窄幅と2つの流量の組み合わせを用いた空力実験
(4)簡略化した声道モデルの数値シミュレーション
により2つの子音の空力音響の違いを解析しました。

【研究成果】

  1. 正中矢状面での調音位置を変えずに、狭窄の冠状面方向の幅と流量を制御することで、[ɕ]と[ç]の音響的な違いを再現しました。(図2)
  2. 数値流体シミュレーションでは、被験者の[ç]を特徴づける4kHzの鋭いスペクトルピークは、狭窄部で周期的な渦管が発生することで生じる流体と音響の相互作用の結果であることが分かりました。
  3. 音声学・音韻論における日本語の歯擦音と非歯擦音の違いを説明する上で、狭窄部の幅と流量が重要な役割を果たしていることを、流体力学の観点から示すことができました。
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図1 被験者による「シ」(左) 「ヒ」(右)の発音の違い(MRIリアルタイム画像)
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図2 「ヒ」(上)と「シ」(下)のモデル内の渦の様子(シミュレーション結果)

実用化イメージ、想定される用途

・構音障害など特定の発音が区別できない人に対して行う言語聴覚士の訓練支援
・日本人の滑舌改善指導
・外国言語の正しい発音習得支援

実用化に向けた課題

・日本語以外の言語での歯擦音と非歯擦音の摩擦音生成メカニズム解析
・舌の動きも含めた流れと音の解析

研究者紹介

吉永 司 (よしなが つかさ)
豊橋技術科学大学 機械工学系 助教
researchmap

研究者からのメッセージ(企業等への提案)

音声に限らず、楽器や歌声の解析も可能です。単純に疑問に思っていることが、思わぬ発見になりますので、お気軽にご連絡ください。

知的財産等

掲載日:2021年12月21日
最終更新日:2021年12月21日