研究シーズの泉

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環境にやさしい再利用技術

廃棄物の再利用、材料開発に関する物理化学的研究

ステータス 基礎 実証 実用化準備

概要

これまで溶融金属の物理化学に関する研究として、クロム鉱石の溶融還元、耐火物とスラグとの反応、反応性ガス気流中での金属の蒸発促進と化合物超微粒子の合成などを行ってきました。現在は、鉄鋼スラグからの溶出、電気炉ダストからの有価物(亜鉛)の抽出、黒鉛分散銅合金基複合材料に関する物理化学的基礎研究を行っています。

従来技術

・炭酸塩の分解は高温度、真空が必要。
・湿式法(酸)では、電気炉ダストから亜鉛が約60%しか回収できない。
・黒鉛分散銅基複合材料の作製には、黒鉛の表面改質などが必要。

優位性

・殺菌灯照射により炭酸塩を分解ができます。
・湿式法での亜鉛の低回収率の原因を明らかにし、その対処法を見つけました。
・銅を1800℃以上に保持すると銅は黒鉛に濡れ、銅中の溶解炭素濃度が増大します。

特徴

1.スラグ
溶出液中のpHは、溶出したカルシウムイオンなどの電荷のバランスで決まり、スラグを純水に入れると、純水に溶解している炭酸イオンがスラグと反応するのでpHが増大します。その後、炭酸イオンの放出によりpHは減少します。
・電気炉酸化スラグに殺菌灯を照射すると、スラグ表面の炭酸塩が分解します。これを利用した二酸化炭素の吸収、脱離プロセスができます。また、スラグからの炭酸イオンなどの供給が減少するので、殺菌灯を照射したスラグからのカルシウムなどの溶出濃度が殺菌灯を照射していないスラグよりも小さくなります。

2.電気炉ダスト
電気炉ダストからの亜鉛の低回収率は、ダスト中のZnO·Fe2O3 が難溶性であることに起因すると考えられてきましたが、ダスト中に含まれる亜鉛含有物質の溶解度調査から、ZnO·Cr2O3が原因であることを明らかにしました。そこで、酸化剤を添加して、3価クロムを6価にすることを試み、ZnO·Cr2O3 からの亜鉛の溶解度を大きくすることができました。

3.黒鉛分散銅合金基複合材料の創製
黒鉛るつぼ中で銅を溶解し、炭素飽和溶銅を冷却したときの、組織を図に示します。球状あるいは片状黒鉛鋳鉄と同様な黒鉛が析出し、黒鉛粉と銅粉との圧粉体を1800℃以上に加熱した場合、複合材料は作製できましたが、気孔率は最大20%と大きいものでした。

023_1 横山先生 図1.png
1900℃で溶解後冷却して作製した黒鉛分散銅基複合材料

実用化イメージ、想定される用途

・紫外線照射によるスラグのセメント代替材料としての利用
・鉄鋼スラグ利用した、二酸化炭素の吸収、放出プロセスの開発。
・電気炉ダストの湿式回収法の開発
・黒鉛分散銅基複合材料はパンタグラフなどの電気を通し、かつ摩擦特性が良い摺動材料として期待される。

実用化に向けた課題

・電気炉酸化スラグの紫外線波長などの炭酸塩分解におよぼす影響の調査
・高温度でのスラグと二酸化炭素の反応性の調査。
・酸化剤以外のZnO·Cr2O3 の溶解促進法の開発。
・銅中の飽和炭素濃度の更に増加し、黒鉛析出量を増加する。濡れ性の改善による低気孔率化。

研究者紹介

横山 誠二 (よこやま せいじ)
豊橋技術科学大学 機械工学系 准教授
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研究者からのメッセージ(企業等への提案)

この技術にご興味をお持ちの企業の技術相談をお受けします。また共同研究等のご検討の際にはご連絡ください。

知的財産等

掲載日:2020年06月08日
最終更新日:2020年06月23日