平成20年度  教育研究活性化経費の成果報告について

本経費は,予算の競争的配分方針に基づき,本学の教育・研究を特色化させるために平成12年度より設けたものです。
教育プロジェクト経費及び研究プロジェクト経費に分類され,詳細については以下のとおりです。
今回,平成19年度末までに終了した研究プロジェクト22件について成果及び評価を公表します。

 1.教育プロジェクト経費
 (1) 趣 旨
   本学のプレゼンスを向上させ,独自性を出すことを目的とした教育を充実するためのプロジェクトに対して必要な経費を配分する。
 (2) 申請及び採択件数
   平成17年度 申請件数 8件  採択件数4件
   平成18年度 申請件数 8件  採択件数5件
   平成19年度 申請件数 7件  採択件数4件
 (3) 成果の公表
   成果報告書を提出するとともに,成果報告会での報告を求める。

 2.研究プロジェクト経費
 (1) 趣 旨

本学のプレゼンスを向上させ,独自性を出すことを目的とした研究を充実するためのプロジェクトに対して必要な経費を配分する。

(2) プロジェクトの種類

. 研究プロジェクトA:

申請額が200万円以上のもの

. 研究プロジェクトB:

申請額が200万円未満のもの

     

 

 

 

(3) 申請及び採択件数

. 研究プロジェクトA

平成17年度 申請件数17件  採択件数 9件
       平成18年度 申請件数16件  採択件数12件
       平成19年度 申請件数 3件  採択件数 3件    
   イ. 研究プロジェクトB

平成17年度 申請件数51件  採択件数28件
       平成18年度 申請件数53件  採択件数28件
       平成19年度 申請件数36件  採択件数15件
 (4) 成果の公表及び評価
    ア. 成果報告書を提出するとともに成果報告会での報告を求めて評価する。
    イ. 評価委員については,以下のとおりとする。

    ・学長及び副学長
    ・博士後期課程専攻主任(4名)
    ・外部評価委員(研究プロジェクトAのみ)
 (5) 評価について
   「研究の独創性」,「実用化への可能性」,「学問的発展への貢献度」,「当初研究計画の達成度」,「高専連携の達成度」(高専連携プ                                                                                                                                               ロジェクトのみ)の5 項目を5点満点(0~5点)で採点(評価)し,「A」は平均点が4点以上,「B」は2.5点以上,「C」は1点以上,「D」は1点未満とした。 
                                                      

区分

 氏 名

研究題目(プロジェクト名)及び採択年度

研究の独創性

実用化への可能性

学問的発展への貢献度

当初研究計画の達成度

高専連携の達成度

総合評価

鈴木孝司

簡易粒径計測システムの開発とその試用・評価・改良(18年度)

液体微粒化は様々な機器で利用されており,噴霧の粒径や挙動が機器性能や最終製品の品質に大きな影響を及ぼしている。この分野の研究の一助となるよう,噴霧 の平均粒径を測定する低価格で必要最低限のシステムを意図して,レーザー回折の原理に基づく簡易粒径計測システムを開発した。試用の結果,制約は多いもの の微粒化の初歩のデータ取得に関しては十分に用途に耐えられると判断されたので,大学・高専の研究者向けに公開した。

外部評価委員の評価 

梅本 実

鉄系自動車用鍛造部品の高強度化の為の制御鍛造技術の開発(18年度)

鍛造部材の軽量化を図るため,部分的に強度・切削性など異なる材質特性(傾斜機能)を持つ新しい鍛

造技術開発を行った。具体的には,高強度化(降伏強度で1000MPa以上)を実現する為のバナジウム炭化物を使った析出強化法の開発と鍛造部材の強度の空間分布をシミュレーションするためのプログラムの開発を行った。このテーマは平成19年度からNEDOのプロジェクトとして採択され,継続して研究を行っている。

外部評価委員の評価

三浦均也

アンカー式補強土壁の降雨時および地震時における安定性評価法の開発(18年度)

補強土壁構造物の地震時安定性と豪雨時における浸透流の影響について共同研究を実施した。「地震時安定性」に関しては,振動特性が異なる構造物の振動-滑動特性を明らかにしその解析手法を開発した。「降雨時安定性」に関しては,遠心力載荷実験において浸透流を安定して作用させるための実験手法を開発するとともに,現象を明らかにした。「模型実験」では,アルミ棒積層体を補強土壁に適用する新たな実験手法の開発を行った。

外部評価委員の評価

増山 繁

次世代高度情報ネットワークにおける信頼性、安全性に関する基礎的研究(18年度)

次世代高度情報ネットワークにおける信頼性,安全性に関する問題から,1.ネットワーク信頼性に関するグラフ理論的問題,2.サーバのレプリカ間で実行順序の合意問題,3.次世代DNS(Domain Name System)の安全性に関する研究,を取り上げ,基礎的研究を行った。学術雑誌論文5編,国際会議2編,口頭発表11編という成果を挙げ,DNSは実用化可能な結果を得た。また,高専連携では,連携先高専教員が学位取得予定等の成果を得た。

外部評価委員の評価

岡田美智男

次世代ロボットにおけるコミュニケーション機能の高度化に関する研究(18年度)

人とロボットとのより自然なコミュニケーションの実現に向けて,社会的相互行為において組織化される「場」の共有を介したコミュニケーションについての理論的な基盤の整理とその検証に向けたプラットフォームを構築した。また様々なタイプの相互行為の「場」を人とロボットとの間に構成し,それらの性質の一部をインタラクション実験で明らかにした。さらに具体的な応用例として,ソーシャルインタフェースなどへの展開を図った。

外部評価委員の評価

浴 俊彦

高等生物のゲノム安定性維持機構に関する基礎および応用研究(18年度)

線虫のゲノム安定化に必須なRNAi関連遺伝子drh-3を発見し,DRH-3が染色体分配に関与すること,生殖細胞形成に必須であることなどを初めて明らかにした。本研究を通じて,高等生物におけるRNAiを介した染色体制御機構の存在を実証するとともに,その実体解明を進めることができた。また線虫寿命短縮を利用した環境有害性評価法やレポーター酵母による遺伝子傷害性評価法に関して技術的な改良を着実に達成した。

外部評価委員の評価

西 和久

自由電子レーザを用いた高温超伝導物性の解析(17年度)

自由電子レーザを用いた光電子分光法で高温超伝導膜の物性を評価する方法を開発した。本研究で導入された方法は放射光の新しい応用技術を開拓すると共に, 高温超伝導の発現機構の解明に大きく貢献することが期待できる。

外部評価委員の評価 

辻 秀人

生分解性ポリエステルの分解速度,機構,および崩壊パターンの評価(16年度)

本研究では,材料構造の初期状態が明確に制御された試料を用いて, 種々の環境下における分解挙動および機構を評価した。得た結果は, 査読付き論文26編, 著書9冊, 特許5件, 総説3編として発表しており, 「分解性」を機能とする場合の生分解性ポリエステルの材料設計に極めて有用なデータを提供するともに, 生分解性ポリエステルの分解速度および分解機構の制御法およびリサイクル方法の開発につながるものである。

外部評価委員の評価

鈴木新一

医療応用を目指したTEACO2レーザーによる水中集束衝撃波の発生と伝播(19年度)

腎臓結石の治療には,水中集束衝撃波が用いられている。しかし,人体内の音速は一様ではないため,衝撃波は結石に同時には到達せず,結石に強い衝撃力が負荷されていない。この問題を解決するために,レーザー誘起水中衝撃波の方法が考案されている。しかし,この方法では,衝撃波を発生させるレーザー光の経路に人体が入ってしまう問題があった。本研究では,レーザー光の経路中に人体が入らない新しい方法を開発した。

柴田隆行

高機能セローム解析を実現するマイクロニードル搭載型バイオプローブの開発(19年度)

本研究では,高度な細胞機能解析(セローム解析)を実現するキーテクノロジーとして,原子間力顕微鏡(AFM)のもつ多彩な機能を備え,かつ単一細胞への生体分子(DNA,mRNA,タンパク質,酵素など)の注入や細胞内で発現した極微量なタンパク質などを高精度に採取する機能を有する"マイクロニードル搭載型バイオプローブ"の開発を行った。

小林正和

放射光を利用した多結晶金属材料の結晶方位分布三次元可視化(19年度)

本研究では,多結晶材料の変形・破壊の研究のために,高分解能な放射光X 線CTと合わせて利用可能な三次元結晶方位分布解析手法の確立を目指す。高輝度単色X線の利用可能な放射光施設において,多結晶材料のX線回折実験を行っ た。試料-検出器距離変化させた画像のスポット座標から,試料内部における回折起点,すなわち,結晶粒を特定するための一連の解析処理および結果の表示を 行うプログラム群の開発を行った。

戸髙義一

ナノ・サブミクロン結晶粒バルク材料における疲労特性の解明(19年度)

本研究では,強ひずみ形状不変加工のひとつであるHPT加工により作製したサブミクロン結晶粒バルク純Feの引張・疲労特性を明らかにした。HPT加工した純Feの引張強度・延性は,高合金鋼であるマルエージング鋼と同程度であった。HPT加工材の疲労特性は,低サイクル領域では,90%冷間圧延した純Feに比べて2倍程度高い疲労強度であった。しかし高サイクル領域では,いずれの試料の特性も大きな違いはなかった。

青野雅樹

徘徊老人の監視および外出防止システムの開発(19年度)

屋内での徘徊老人を想定した人物の位置推定を0.8秒以上同じ場所にとどまっているという前提と0.8秒未満で移動しているという2つの仮定のもとにデータマイニング手法をいくつか開発し, 最初の前提では94%の位置精度を, また2つ目の前提では位置精度は30%だったものの部屋精度では90%の精度を達成した。

三浦 純

季節や天候の変化にロバストな視覚ナビゲーション技術の開発(19年度)

視覚による屋外での位置推定手法を提案した。季節や天候の変化にロバストな物体と位置の認識手法と確率的位置推定手法を組み合わせることにより,高精度な位置推定を実現した。約3.2kmの屋外経路における実験では,多様な状況下で100%の位置推定成功率を得た。パラメータ調整をほとんど必要とせず,処理時間もオンライン処理可能な範囲である。また,提案手法の歩行者向けナビゲーションシステムへの応用について検討した。

杉原 真

高信頼化組込みシステムのためのシステムアーキテクチャ技術に関する実証的研究(19年度)

ト ランジスタの微細化に伴い,集積回路のソフトエラーが増加している。本研究課題においては,性能と信頼性を両立するキャッシュ・メモリ方式の提案,及びヘ テロジーニアス・マルチコア方式の提案を行った。提案を行った2つの回路方式に対して,性能と信頼性を両立するタスクスケジュール方式を提案し,本研究室 で開発した信頼性シミュレータによって実証実験を行った。

河内岳大

分子包接能を有するらせん型ホスト高分子の開発(19年度)

シンジオタクチックポリメタクリル酸メチル(st-PMMA)は有機溶媒中でらせん構造を形成し,そのらせんの内孔に機能性分子であるフラーレンを取り込み,結晶性の包接錯体を形成する。本プロジェクトでは,この包接錯体の構造について詳細に調査し,ホスト分子としてのst-PMMAらせんの包接能について調べた。

武藤浩行

重畳力学場による高速低温超塑性変形の検討(18年度)

難加工性のセラミック材料を安価に加工できる技術を開発した。超塑性変形を容易に発現させるために,重畳力学場(静的な引張と振動)を用いた高温試験装置を開発した。重畳場を付与することで変形を制限するキャビティーの生成を抑制できることが示された。同時に,粒成長も劇的に抑えられることから,重畳力学場を用いることでセラミックスの加工性が向上することが示された。

眞田靖士

鉄筋コンクリート構造の力学的合理化による耐震性能の改善効果の実証(19年度)

RC耐震壁と非構造壁を有するRC柱梁架構を対象に,力学的に弱点となる側柱脚部の局所補強による耐震性能の改善効果を実験的に検証した.局所補強の有無をパラメータとして,耐震壁,ブロック壁を有する架構の3/10模型を製作し,破壊実験を実施した.その結果,弱点の局所補強により,耐震壁では耐力が約110%,変形性能が約170%に,柱梁架構では耐力が約120%,変形性能が約200%に向上することを実証した.

對馬孝治

安定同位体比分析を用いた森林源流部からの窒素流出機構の解析(19年度)

安定同位体比の計測手法を渓流水中の窒素に適用し, 硝酸イオンの生成過程や起源を明らかにすることで,酸性沈着物の森林への影響を解析することを目的とした。岐阜県伊自良川におけるモニタリングによると, 硝酸イオンの濃度に影響は現れていないことが分かった。安定同位体比の計測手法は各部分で良好な回収率が得られ, 最終確認を実施中であり, 硝酸イオンの起源や生成過程の解明に寄与する研究に発展することが期待される。

石田好輝

免疫系格子モデルと確率シミュレーションによる投薬戦略支援システム(19年度)

HIVなどの擬種の変異も含めたダイナミクスをすべて確率遷移ルールに置き換え,モンテカルロ法によるシミュレーションし格子空間で表現するシステムを構築した。また擬種を表現する際の表現不変性による対称性の認識,HIVの致死性も考慮した新たな確率モデル,時間依存する動的な閾値条件も得られた。本研究で多様性を表現する静的指標と、その多様性のダイナミクスを表現する動的システムを橋渡しする事を試みた。

佐久間邦弘

走運動が加齢期の骨格筋萎縮(サルコペニア)を軽減するメカニズム(19年度)

加齢性筋肉減弱症(サ ルコペニア)を抑制する自発的な走運動モデルの開発に成功した。このモデルは通常のトレッドミルを用いた強制運動とは異なり,ストレスが少ない。走運動マ ウス群の大腿四頭筋では,筋萎縮を誘導するユビキチンやFoxo1の発現が顕著に減少していた。実験動物の自主的な運動を促すこのモデルは,ヒトの運動と 共通する部分が多く,運動がサルコペニアを軽減するメカニズムを解明する上で非常に有用だと思う。

三枝正彦

工-農連携研究推進実験農場の造成と各種フィールド試験研究の推進(19年度)

工-農連携研究推進のために実験農場約10aを造成すると共に, 以下のフィールド試験を実施した。1)難分解性Alコンポストによる炭酸ガスの下層土貯留と根環境の改善 2)超強酸性茶園土壌の実態解析と酸性矯正に伴う茶の生育変化3)肥効調節型肥料封入シードテープによるホウレンソウの低コスト高品質栽培 4)アルカリ土壌における野菜の生育に対する鉄資材の施用効果 5)東三河地域への新規付加価値作物の導入

 ※ 総合評価欄の( )内は,前から「研究の独創性」,「実用化への可能性」,「学問的発展への貢献度」,「当初研究計画の達成度」,「高専連携の達成度」の評価を示す。


Copyright (C) 2005 All rights reserved
豊橋技術科学大学総務課学長オフィス
TEL:0532-44-6539(直通)
pof@office.tut.ac.jp