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第12回 竹中 征夫 氏 『グローバルに進出する日本企業の課題』 7/7ページ

トランプ新大統領について

最後にトランプさんの話をします。トランプさんについては、私はずっと前からクライアントとそういう話をしていました。勝つと言っていた数少ない1人です。私がなぜトランプさんが勝つと言っていたかというと、私が皆さんに、最後に言っておきたいことは、枝葉で物事を判断する見ることをできるだけ避けることなのです。できるだけ根っこを見てほしいのです。トランプとヒラリーのどちらが勝つか、枝葉で見たらヒラリーが勝つに決まっています。根っこを見ると、意外とトランプが勝つのだということがわかるのです。メディアは全部ヒラリーファンです。アメリカでもフォックスニュースというテレビ局以外、全部ヒラリーが勝つと言っていました。日本も当然そうでした。しかし、よく見てみると、トランプさんはものすごく頭のいい人なのです。あれだけの財をなした人でバカな人はいないのです。

もう1つ、彼は嘘が言えないのです。発言は耳障りかもしれませんが、彼はいつも本音です。ヒラリーさんは聞きやすい、いいことばかりを言ってくれます。だから人気があるのですが、しかし、それは全部、そのシチュエーションに合ったことを言っているだけで、それは彼女の真意ではないかもしれないのです。

非常におもしろいのは、トランプさんがなぜいい人かというと、彼は3人の女性と結婚しています。日本ではそれだけで「あいつは悪いやつだ」となるのですが、狩猟民族では、離婚はしょっちゅう起こります。彼は3回結婚し、3回とも子どもをつくり、ちゃんと養育し、膨大な慰謝料を払っています。2度目も同じことをして、3度目の結婚をしています。
彼の子どもたちを見てください。違った奥さんからそれぞれ子どもができています。アメリカ人から見ても、みんな素晴らしい子どもたちです。変な親父にあんな素晴らしい子どもはできません。これが根っこです。責任を取っています。男性も女性も、異性が好きですからそれはしょうがない。しかし、彼は一つひとつきちんとけじめを付けて責任を取っています。
そこを見ないといけない。そこが彼の根っこです。私は、彼 は頭がいいと思いますし、すごいと思ったことは、どこに急所があるかをきちんと捉えていることです。あれはビジネスの勘でしょう。

トランプはメキシコに壁をつくると言っています。アメリカ人も、みんなつくるのだと本当に思っているのです。しかし、4年間でメキシコに壁はつくれません。万里の長城はどのぐらいかかったことでしょう。つくれるはずがないのです。彼が言っている壁は、いまはメキシコ側がアメリカに全く協力していないので、違法移民がどんどん入る、麻薬も入ってくる、それを一生懸命止めようとしているのはアメリカだけだということです。メキシコは協力していません。NAFTAで北米の経済圏をつくるのですが、どんどんアメリカの生産拠点が メキシコに移り、メキシコは大変な恩恵を得ているのです。
トランプが言っていることは「おかしいではないか」と、それだけの恩恵を受けたらメキシコはちゃんとやるべきだということです。いままで、ジョージ・ブッシュもオバマも、何もやってきていないのです。そこを彼は言っているわけです。
彼は「メキシコが払います」と言っています。払うわけがない、メキシコがと。しかし、払うのです。彼が言っていることは、メキシコでも必ず違法移民を止めてくれ、必ず麻薬も通関で止めるようにしてくれと。要するに、メキシコ側で歯止めをしてくれと言っているのです。当然、それに合意すれば、メキシコが金を払うのです。トランプが言っていることは、これだけ経済の恩恵を受けたのなら、それだけのことをしろと。
当たり前のことです。彼の言っていることはめちゃくちゃではないのです。

TPPも反対だと言っています。いまのままでは反対だと言っているのです。TPPそれ自体に反対ではないのです。彼は商売人ですから交渉が上手です。必ずタフな交渉に出ているわけです。彼は利口ですから、必ずマイナスの内容にきちんと対応する。

アメリカがどうなるのかと、日本はどうなるのかと、心配しなくてもいいのです。孫さんのような人がどんどん出てくれば、アメリカと日本はもっとうまくいくでしょう。同時に、アメリカの場合はこれからよくなるのです。なぜでしょうか。
彼が任命している大臣を見てください。大変優秀な人ばかりなのです。彼はビジネスで言えば最高経営責任者ですから、必ず優秀なマネジメントを彼らに任せていくのです。もちろん大きな方向性は彼が指示します。しかし、彼が全部やるわけではないのです。よく「トランプになったら大変だ」と言われますが、私が皆さんに言っておきたいことは、トランプは大丈夫だということです。アメリカはこれからますますよくなります。逆に言うと、いままで、ブッシュさんにしろ、オバマさんにしろ、あまりにも大盤振る舞いしすぎてアメリカがどんどんひ弱になっているのです。いままでの大統領は、残念ながら16年間、あまり能力のない人だったと思います。
これからの4年間のトランプは、私は非常に順調に行くと思いますし、日本との関係もよくなるでしょう。いかに日本がアメリカにとって大切かということをトランプはよくわかっています。ただ、軍備など、きちんと考えて自分で持ったらどうかということは、日本人は考えたほうがいいと思っています。

若い皆さんに申し上げますが、国歌が歌えない、国旗が掲げられないような国をつくってはいけません。国である以上、国歌があり、国旗があります。それによって団結していくことが国家です。シンガポールを見てください。あれだけ小さな国でも軍を持っています。徴兵制度があります。ただ、攻撃されても守り切れないでしょう。しかし、シンガポールという国は独立国であり、国民に自分たちの国であると意識させるために軍隊を持っているのです。戦うためでもない、守るためでもない、国家というものをつくるための1つの手法なのです。日本も、軍を持つか、持たないかというといろいろ議論になると思いますが、ぜひ、少なくとも国歌が歌え、国旗を掲げる、堂々とした国になってほしいと思います。これで終わります。ご清聴ありがとうございました。

質疑応答

【本学准教授】
示唆に富んだお話をありがとうございました。2つあったのですが、1つにします。
日本とアメリカでそもそも雇用の根本的な考え方が違うとよく言われると思いますが、M&Aをしてしまうと、本社と支社でダブルスタンダードというような意味で、現状と今後どうなるか。日本側がむしろ雇用関係をこうなるべきではないかというところで思うことがあったら教えていただきたいと思います。

【竹中社長】
はい。スタンダードを2つ持っているという話しは、わたしはちょっとそぐわないと思います。なぜかというと、グローバルビジネスというのは、ある意味、グローカルビジネスなのです。ローカルに合わせないといけないビジネスなのです。だから、日本がちょっと反省すべきではないかと思うのは、グローバルスタンダードというと、日本にとって、良いかわるかは別にして、全部日本で用いてしまうのです。多くは、日本にとっては悪いです。だから、みんながやるから自分も入れているという感じです。自分の国としてこれを用いるべきかどうかということを本当に考えて、受け入れるものは受け入れるし、リジェクトするのもはリジェクトしないといけないと思います。わたしは、日本は正直な話し、すべての生き物は、環境が変わったら変わらざる得ない。

これは、要するに、熱帯のときに、恐竜がノソノソ歩いていて、だったらみんな死んじゃったんですよ。残ったのは自分を守れる爬虫類だけだったのです。そういう意味で、すべての環境というのは変わらざるを得ないのです。だからわたしは手法などは、変わらざるを得ない。ただ、信念や哲学などは変えてはいけないと思います。日本は変わらざるをえないと思います。なぜかというと、どんどん環境が劇的に変わっていくわけです。

わたしはもっと1つ言いたいのは、これだけ人口が減って働く人がいないといいながら、未だに日本の企業はある年齢を過ぎると一挙にその人のお給料を下げて退職をさせてしまいます。退職をしないといけないようにさせてしまう。ものすごいもったいない話しです。人が足らないのに。それだけノウハウをもっている人が。ただ、問題はその人達が高齢になると働いていないという事実ですね。管理職なって働いていない。でも、はっきりいって、働く人は、まったく歳を感じないです。わたし74歳です。全然歳を感じないです。今でも皆さんはほとんど気持ちさえ変われば同じなのです。だからまず1つは、もっと高齢者に働いてもらう。給料を減らさない。残ってもらって活躍してもらう。そして、パフォーマンスができない人は辞めてもらう。これは仕方ないですね。だからここはやはりちょっとアメリカから学ぶことがある。もうすこしフレキシビリティ、雇用は自由にしないと、今は1つを辞めて次というのはなかなか難しいです。世の中、どんどん狩猟民族化していくので、雇用ももっと流動的にした方がいいと思います。

【本学准教授】
ありがとうございました。

【学生】
お話を聞いていて時間短縮が重要ということをおっしゃておりましたが、自分が小中高大と授業とかを受けてきて、そういう中で時間短縮をしている努力をしている先生にはあまり会ったことがありません。自分はこういう考えは必要だと思っているのですが、持っていていい考えなのでしょうか。

【竹中社長】
ただね、学校というのはご存知のとおり、基礎作りですから。
基礎作りはやはり時間がかかるのです。わたしが言いたいのは、基礎はしっかりと作らないと、根がしっかりしていないと強くなれない。だから、勉強はしっかりして、そこのとろでショーカットはする必要はないと思います。ただ、実社会になって動いていたときにそれはするべきです。ただ、わたしが日本の教育で一番問題があるというのは、みんなを平均にしようとすることです。これはやめた方がいい。優秀な人はどんどん先にいけるようにして、そして、優秀でない人もちゃんとできるような、そういう2つのコースがあっていいと思います。それをみんな平等化してしまうと、両方ともにダメになってしまう。ですから、そういう意味で、大切かというのは別として、やり方はたくさんありますね。

それから、もっと授業に実社会の体験を取り入れてほしい。
要するに、理論を勉強するのは学校でいいです。でも、それを裏付けるものは実際の例を持ってきて、例えば実社会の人の話を聞くとか、実際に開発している人の話を聞くとか、そういう実社会と結び付くような教育をするべきだと思います。
時代が変わっているのです。昔はただ教育だけで済みましたが、それではちょっと間に合わないところもあるのです。一番面白いのは、アメリカの大学の先生は、みんな研究開発をして事業を起こしています。

ですから、そういうところから独立して企業を起こそうとしている学生もでてきているので、日本の大学も、もう少し実社会にむけて準備は心がけたほうがいいかなと思います。でも基礎作りをはしょってはいけないと思います。わたしがよかったなと思うのは、最初、ものすごくハンディキャップで事務所にはいりました。だからカメだったのです。ウサギはどんどんわたしより早く進んでいったのです。でもカメだったために、時間があり徹底的に学びました。白人でウサギのひとは、ポンポン進んでいったので、上っ面だけ学んだけれど、わたしみたいに本当に学ばなかった。わたしみたいに一度そこから出たときに、とても早かったですね。基礎がしっかりしていたからです。どの商売でも、寿司の板前さんであろうと誰であろうと、基礎作りというのは時間がかかるのです。そこでのショートカットはあまりないと思います。なぜかというとそこで原理原則を覚えて、根っこを作るのですから、それは簡単にはできないと思います。だからそこで忍耐というのも必要ですし、もう少し現実に近づいた教育をしたら、学生さんも楽しいのではないかなと思います。

【学生】
ありがとうございました。

  • 質疑応答

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