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第12回 竹中征夫氏 『グローバルに進出する日本企業の課題』 6/7ページ

グローバル化における日本企業のこれから①

日本企業の海外の人たちの使い方も下手です。私は多く企業買収をします。既存の会社を買収するわけです。そこにはすでにシステムもあり、人もいて、ビジネスもあるわけですから、そういうものをどうやってうまく管理していくかということは、日本企業のオーナーとしての大きな責任です。これも私にとって不思議なことですが、日本企業の子会社の管理の仕方は、2つのどちらかなのです

1つは重箱の隅をつつくような管理です。細かいところ、関係のないところまでどんどんやるやり方です。現地の従業員の嫌気が差してしまうやり方です。先ほど言ったモチベーションを全く持てない環境をつくってしまうのです。
もう1つは、任せきりです。日本ではある程度優秀な人であれば任せきりでいいかもしれませんが、狩猟民族の社会で任せきりはあり得ません。なぜ任せきりかというと、信用しているからでしょう。日本は悪いことをしたら逃げられない社会だからかもしれませんが、任せきりという経営が多いのです。任せきると、人間は必ず公私混同が始まるのです。見られていれば襟を正すということは正しいのです。誰も見ていない、自分が全部コントロールできるとなると、必ず悪いことをする、公私混同が起こる。これが人間なのです。

なぜ、中間の、見るところは見て、任せるところは任せるということができないのか、私は理解できません。しかし、きちんとやっている企業は非常に少ないのです。どちらかに偏ってしまう。これも狩猟民族と農耕民族のギャップではないかと感じています。これからどのように管理していくか。海外の子会社の経営管理について通信簿の点数を付けるなら、完全にCでしょう。しかし、逆に考えれば、Aに持って行ったら大変よいことですので、可能性はまだまだたくさんあると思います。

矢崎総業という会社があります。あそこの現社長と私は、昔から大変親しくしています。副社長の頃から一緒に仕事をしていました。そこのお兄さんが跡を継いで社長になりました。お祝いに行ったところ「竹中さん、申し訳ないけれど、社長は忙しく、時間がないので、30分でいいか」と。「いいですよ、お祝いを言うだけですから」と言いました。その30分の間に、秘書が4回入ってきました。「お忙しいですね」「そうなのです」「でも、矢崎さん、おたくの商売の売上は、どれほどが国内で、どれほどが海外ですか」とお聞きしました。当時、80%は海外からの売上、20%は国内だと。「社長としてどういうふうに時間を使っているのですか」と聞きましたら、「恥ずかしながら、逆なのです。自分の時間の8割は日本のことで使われていて、アメリカのことは2割なのです」と。「日本は難しいのだよ、竹中さん」「どうしてですか」「何か文句があると、社長が謝りに行かなければ許してくれない。葬式があれば、「あそこの社長は来なかった」と言われるし」と。大変忙しいのだと。これが日本であれば、もう日本を出て行くしかしょうがない、海外にヘッドコーターを移すということです。最近はそういう会社が出てきています。建設会社は海外ビジネスを全部シンガポールから管理しているといった会社も出てきています。日本からどうやって出ていくかということは、非常に大きな課題だと思っています。

私の専門であるM&Aというのは、Merger&Acquisitionの略字です。私は1987年にダイヤモンド社から「企業買収戦略」という本を出しました。これは当時ベストセラーになりました。多くの銀行の方たちがその本を教科書として使ったということで、参考になった本だと思います。私は、M&A戦略という言葉を使いたかったのですが、ダイヤモンド社は「M&Aといっても誰もわからない。逆にM&Aチョコレートと間違えられるから「企業買収戦略」にしてくれ」ということでこの題名になりました。

その本を書いたとき、私が手本にしたのは、私の最初の顧客が大企業ではなかったのです。マツダでもホンダでも日立でもありませんでした。実は日本ミニチュアベアリングという中小企業でした。いまはミネベアという総合会社になっています。私は公認会計士であるにもかかわらず、ここの社長と20件ほどの中小企業買収をしているのです。高橋高見さんという人は、日本で日産からベアリングのビジネスを引き受けました。お父さんは日産でつくっている屑鉄の商売をしていたのですが、日産が「こういうものを売りたいから、お前のところで引き取らないか」ということで、お父さんがその事業を引き取りました。自分は屑鉄で忙しいので、息子が慶應大学を出て、カネボウにいたところを呼び寄せ、「これをやれ」と言われたビジネスでした。当然、日産が切り離すぐらいですから、あまりうまくいっていなかったのだと思います。彼は、なかなか日本では売れない、新参者は相手にしてもらえないと思っていました。アメリカは製品がよく、値段がよければ売れると考え、渡米し、彼は自分でアメリカ中を駆け回りました。すると、品質がよいこと、値段が安いことで、軍需産業が全部使ってくれたのです。そこで大変なビジネスをつくって、子会社をつくることになりました。そこで私の顧客になったのです。

そのときに彼が言ったことは「自分は総合メカトロニクスの分野になることが夢だ」ということでした。彼は当時すでにメカからエレクトロニクスに動くところを察知しており、メカトロニクスという言葉を使って私に説明したのです。そこで、そういう商品を持っている会社を20件ぐらい、彼と一緒に買収しました。経営企画をしていたようなものです。高橋さんと一緒に20件の買収をして、これが大変おもしろかったのです。それは私が独立した1つの大きな理由です。高橋さんには夢がありました。部品を買い、それをタイのアユタヤ工場で大量生産することです。私はロサンゼルスからアユタヤ工場を設立しに行ったのです。そこで私はM&Aというもののやり方を覚えました。

これはいまの時代に大変合っていました。私は89年に独立していまの会社をつくったのですが、いまが一番忙しいのです。なぜなら、日本企業は現状を見て、海外に出なければいけないという意識を持った企業がものすごく増えたのです。いま、商売繁盛でとても忙しくしています。M&Aという戦略は、私も長い間やってきていますが、大変いい選択です。いまの時代に合っているのです。いままでは、日本は、石橋を叩くように自分からつくり上げることが正しいやり方だと思っていたのですが、いまは逆にそれは大変なリスクです。スピードが速すぎるので、早くプラットフォームを手に入れ、それを使い、自分の商品なりを乗せたほうが目的に到達するのが早いのです。10年経ってつくっていたら、そのときにはもう汽車は走って行ってしまって、次の汽車が行っているという状況になります。M&Aは、これから日本企業が最も使わなければいけない戦略です。お金はあるのですから。要するに、自分たちの戦略に合ったいい企業を適切な値段で手に入れて、いち早く目的に達する、そういう方向に変えなければいけないと考えます。

しかし、M&Aのアクウィジション(acquisition:買収)というもの、私はそのアコゼッションの下にアライアンスという言葉を付けます。いまの時代は全部自分がコントロールする時代ではありません。相手の強みをお互いに寄せ合い、アライアンス、協定を結び、協力して目的地に走る時代なのです。いま、よく見ていると、大企業であるグーグル、アップル、みんなM&Aを使っています。自分のところではほとんど開発をしないのです。多くの技術は、彼らが見て「これはおもしろい技術だ」と思うと、普通の人が払う金額よりも100倍、150倍で買うのです。日本企業から見ると「おかしいではないか、なぜ普通の値段の100倍で買うのか」と思うのです。しかし、でたらめではないのです。彼らはきちんと立派なプラットフォームを持っているので、その商品をそのプラットフォームに乗せたら一挙に売上が上がるわけです。そのフォーキャストをして、それを現在価値に換えて金額を出しているのが100倍なのです。プラットフォームのないところでやったら100倍は払えないのですが、グーグルやアップルのようなところは、プラットフォームがあるだけに、いい商品であればそこに乗せれば一気に利益が出るのです。ですから払えるわけです。ちゃんと利益が出る計算なのです。大企業でもアライアンスを結んでいるのです。中小企業もこれからはそういう時代ですから、知恵さえ使えば、いままで不可能なことがものすごく可能になってきているのです。弊社は大企業のお手伝いもするけれど、中小企業の仕事もしています。私がアメリカに渡ったとき、自分の役割は何なのだ、なぜアメリカに来ているのかと考えました。そこで自分が公認会計士を通じて決心したのは、自分がアメリカにいるのは、神様が日本企業の国際化、グローバル化を手伝えという使命を私にくれたのだと。それを私の役割だと思い、いまも元気に走り回っているわけです。しかし、根は日本人なのです。日本に頑張ってほしいのです。そのためには何でもします。大企業の成功もうれしいのですが、大企業が成功するのは当たり前で、中小企業が成功できれば、私の喜びは大企業の10倍、20倍です。そういうところが非常によい成績を出せるわけでしょう。

グローバル化における日本企業のこれから②

おもしろい例をお話ししましょう。新潟県の佐渡島に北雪という造り酒屋さんがあります。この北雪の社長とお会いしましたが、彼は大変ラッキーでした。そのラッキーのあとは自分の実力です。松久信幸という、世界でも、アメリカでも有名になった日本人シェフがいます。彼はユダヤ資本の協力を得てロバート・デ・ニーロという映画俳優と一緒に「NOBU」という高級和食レストランチェーンを世界中にオープンしています。アメリカでも、ニューヨーク、シカゴ、ラスベガス、ロサンゼルス。そしてパリ、ロンドン、香港、世界中にあるのですが、そのNOBUさんが自分のところで出す酒を探していました。そのとき北雪を飲んで素晴らしいということで、その北雪を扱うようになったのです。北雪は新潟県の佐渡島から直接パリ、ロンドン、香港、アメリカに送って国際ビジネスをしています。そこまではNOBUさんがつくってくれました。そのあとが素晴らしいのです。そういうレストランができる、たとえばパリにできると、必ずパリの 有名なレストランのオーナーたちが「NOBU」に試食に来ます。当然和食ですから、刺身などがあります。そしていわゆる米でつくったワイン、酒を飲むのです。それが気に入り、そのオーナーから、うちにも買えと注文が来たそうです。フランスの料理のオーナーがなぜ酒を買うのか、最初はわからなかったのだと。わざわざ聞きに行って調べてみたら、「NOBU」に行き、それを飲んだのだと。だから注文が来たのだと。
彼は市場調査をしたのです。そうすると、フランス料理も実を言うと日本の食の技術の影響を受けているのだそうです。日本料理は、食べ物のおいしさを目で見て、舌で味わうという2つがあります。ほとんどの世界の食べ物は舌で味わうのです。ところが、日本の盛り付けは非常に素晴らしい。それを気に入り、フランスのシェフたちも前菜をきれいに盛り付けることを覚えたのです。

余談ですが、それをつくるために一番いいのは、実は日本の包丁なのです。フランスのナイフではできないことです。
ですから、アメリカの有名なシェフはみんな日本製の50万円の包丁セットを持っているのです。何に使うのか。盛り付けです。きれいに切って盛り付ける、盛り付けという日本のノウハウがフランス料理にも影響し、そのフランス料理が生魚を前菜で出すようになった、生魚には酒が合うのだそうです。
そして、彼はどんどん、「NOBU」を中心にマーケティングをおこない、日本の「NOBU」だけでなくいろいろなところから注文を取れるようになり、佐渡島の一介の造り酒屋がグローバルビジネスを始めているのです。社長が誇りを持って私に話してくれました。いま、このように、頭さえ使えばいろいろなビジネスチャンスがあります。

いままで日本人は「人に迷惑をかけるな、全部自分でやれ」と言われてきました。私も過去はそうでした。人に迷惑をか けない、全部自分でやるのだと。しかし、いまの時代、人に迷惑をかけてはいけないが、全部自分でやるのではなく、何をしたらできるかという方法を考えて、一番目的に達しやすい方法を開発して使うべきだと思っています。ですから、いま、私がいつも言っているのは、スマートウェイだと。スマートグリッドです。いつでも、どこでも、どのぐらいの数で、一番そこでやりやすい方法、必要なときに配達できる、これがこれからのビジネスです。

また、いま、全てのビジネスに求められていることは、ものを売っているだけでは絶対に儲からなくなることです。必ずそのものにバリューを付けていかなければいけない。同時に、ソリューション、問題解決をプロバイドできること、ソリューションプロバイダーになることです。部品だけを売っていても儲かりません。先ほど言ったミネベアが一番いいのです。最初はベアリングだけ、その次に複合部品をつくり始める、次にシステム運用をつくり、いまやシステムをつくる。システムをつくるために彼らが必要だったのは、センサーの技術とワイヤレスの技術、コントロール技術、これを全部よそから買い入れて繋いでいます。そこから今度は、クラウドを使ってビッグデータで解析し、そこから出てきたものをどのようにシステムに再編成して使うかということをしているのです。いま、ミネベアはIBMのワトソンAIを使い、介護ビジネスに入ろうとしています。つまり、これからは繋がっていくことが非常に大切です。繋げるには新しい森、テクノロジーが必要です。日本も世界的にテクノロジーを追究していかなければいけない時代で、自分だけで開発していても間に合わないでしょう。これから日本の企業はどんどん海外へ行き、いろいろな勉強をする、そこには宝の山があると思います。

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