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第12回 竹中 征夫 氏 『グローバルに進出する日本企業の課題』 5/7ページ

ICTの時代の脅威

ご存じのとおり、サイバーアタックはいま、大変な問題になっています。いまのコンピュータのアーキテクチャーでは守りきれないのです。コンピュータはもともとオープンであり、みんなが使用できるようになっています。インターネットでも何でもそうです。そういうオープンアーキテクチャーなのです。ですから、守りにはすごく弱い。いまや、皆さんの90%、ひょっとしたら100%のシステムに必ずバイオレンスが入っています。そのぐらいサイバーアタックは大きな問題になっているのです。

たとえば、いま、電力でも全部コンピュータでコントロールされています。そこにサイバーアタックされたら電力が使えなくなります。社会は全て電力に頼っていますから、全部止まってしまいます。サイバーアタックへの対策を探してくれという日本企業はいくつか言います。私はそのすごい企業を探しました。20年かかり、40の特許を取ったところです。その発明家はもともと通信のシステムをつくっていたエキスパートでした。通信は逆に言うとクローズで、閉鎖されたアーキテクチャーなのです。必ずコンピュータにはこの問題が出るということを、彼は事前に理解し、20年、自分のお金と人から集めたお金で一生懸命研究して40の特許を取りました。彼は頭のいい人ですから、最初は、その特許を違反した人から「お前はうちの特許に違反している」と言い、そこからロイヤリティをもらう商売をしようとしました。そうすればあまり努力しなくてもお金はどんどん入ってきます。ところが最近サイバーアタックが大変な問題になってきました。たとえば自動車の自動運転がありますが、あれがハッキングされたら大変なことになります。エンジンも止められない、ブレーキも効かない、そういうことができてしまうのです。

いま、ほとんどのものが科学コンピューティングになっています。この大問題は、サイバーセキュリティされていないのです。あそこに入っていったらめちゃくちゃにされてしまうのです。その会社はそれを見て、そういう後ろ向きなお金の儲け方ではなく、社会にとって大変なことになるから、このノウハウを売っていこうと、その相談が私に持ちかけられたのです。私の顧客でもそういうものを求めているからと、ある1社に紹介しました。そこでマッチングさせたのです。結局、農耕民族と狩猟民族の差が、素晴らしい可能性があれば狩猟民族の社会では感動されるのです。まず、受け入れるのです。しかし、そのとき農耕民族の反応はどうだったでしょうか。後ろ向きでやって、「こいつらは本当かな」と横から見ているのです。態度が悪い、疑っているのです。最初から本物かどうかと疑う。そこが農耕民族の真面目さでもあるとは思うのですが。しかし、その社長は、「おれはこの会社と仕事はしたくない」と帰ってしまった。当然狩猟民族の中で、それが本当ならやるのです。ところが農耕民族は最初から疑ってかかる。それは次のステップなのです。もちろん、狩猟民族もそれを鵜呑みにはしません。

しかし、まず感動して、相手に話をさせるわけです。

もう1つ、覚えておいてほしいのは、アメリカ人は話すことが大好きだということです。日本人は話が苦手です。私は日本企業の契約をしばしばするのですが、そのときにいつも勧めているのは、予算管理だけは徹底的にやりましょうと。予算をつくるときには徹底的に研究し、狩猟民族の人にはその予算でエキシビジョンしてもらう。その予算で達成できれば、それは最高に報酬を与えましょうと。その代わり、達成できなかったら首にする。アメリカでは、うまくいけばほめて報酬を付ける、まずかったら首にしていいのです。アメリカで人を首にするとき訴訟を受けることがあります。たしかに訴訟は受けるのです。しかし、アメリカでパフォーマンスベース、実績、実行する力によって、そこに達成できなかったので首にすると訴訟問題にはなりません。たとえば「お前は態度が悪かったらこんなに実績が出なかった」となると、必ず訴訟問題になります。私がいつも言うのは、首を切るときに悪いことは言っては駄目だと。首を切るだけでいいのだと。「お前の態度が悪い」などとは絶対に言わないようにしろと。しかし、そうは言ってもやってしまうのです。

オープンイノベーションで日本がもっと真剣にならなければいけないのは、新しい技術を求めているのだったら、特にアメリカから求めているのだったら、疑うのではなく、まずは感動しましょう、感激しましょう、それから潰していきましょうと。それで駄目なら駄目であると。ある意味、日本人は真面目すぎるのかもしれません。オープンイノベーションでも、狩猟民族と農耕民族の差がそんなところでも出てくるのです。くれぐれもアメリカは狩猟民族の国だということを理解していないと、日本企業は絶対に成功しないと思います。

グローバル化の中の狩猟民族化

もう1つ付け加えておきたいのは、いま、世の中はグローバルを見ていることです。その中で私が感じるのは、実はどんどん狩猟民族化しているということです。人口は農耕民族が多いのですが、実際におこなっている行為は狩猟民族化しています。なぜなら、テクノロジーです。いま、テクノロジーがほとんど何でも可能になる社会をつくってきているのです。テクノロジーの進歩が始まると、農耕民族的なビヘイビアは付いていけないのです。その考え方に付いていけるのは狩猟民族です。世の中はどんどん狩猟民族化していっていることも、日本人がこれから考えていかないといけません。

そこで私が一番言いたいことは、日本企業の大問題としてのスピードです。あまりにも日本企業は遅すぎます。一時期はよかったと思うのですが、いまはサラリーマン化が巨大化しすぎたのです。大きければ大きいほど、いろいろと意見を言う人が増えて全く進まなくなります。私が最近やっているM&A、企業買収は、非常におもしろい可能性のある企業が出てきて、それが私のクライアントに合っているので「これはぜひ、検討するべきです」と助言しました。実行ではなく検討です。デューデリジェンス(duediligence:投資やM&Aなどの取引に際して行われる企業や不動産などの資産の調査活動)でパフォーマンスをして、調査をして、調べてから、買うか、買わないかを決めようとする、そのデューデリジェンスをする、それをやるのに、社外重役を含めたボード、取締役会で承認を取らなければいけない。これはマネジメントの責任分野なのです。なぜそこまで行かなければいけないのか。しかし、そうなのですと。デューデリジェンスの調査をするか、しないかを決めることだけで3ヶ月かかりました。私から言わせるとおかしなことです。ボードは株主の代表であり、経営陣がちゃんとやっているかどうかを調べる人たちであり、会社の運営、経営はマネジメントの責任なのです。この会社を買収するか検討するのは、最終的にはボードの許認可を得なければいけないけれど、やるか、やらないかを検討する調査になぜ社外重役を含めた取締役会で許認可を取らなければいけないのか、それが3ヶ月かかる。もっとひどいことに、その3ヶ月を外で調査しなければいけないのに、調査をしているのではなく、脚本づくりをしているのです。社内でも、取締役会でも受け入れられるようにと、脚本づくりをしている。そんなペースで企業買収などうまくいくでしょうか。全く調べていないのです。ですから、時間の使い方、スピード感は、いま、日本企業にとって一番大きな課題です。

もう1つあります。ある大きな企業で、こういうテクノロジーを探してくれと言うので、探してきて、相手のほうがNDA、ノン・ディスクロージャー・アグリーメント、守秘義務の契約が来ました。これ以上開示するのであればこれにサインしてくれと。この会社は3ヶ月経ってもまだ守秘義務の契約が出てこないのです。いま出てきても、もう相手から断られるでしょう。「興味がないのですか」と聞きましたら「あるのです。ただ、時間がかかります」と。いまの時代にそんなペースでやっているのでは、私は、一番の問題として日本企業はどんどん弱くなっていくと思います。海外の中でもっと狩猟民族的なことを学び、実行に移さない限り、弱くなるでしょう。やはり、社外重役も日本人だけのえらい人を入れるだけではなく、もっと外の狩猟民族の社会から優秀な人を入れて、「なぜ、こんなバカなことをするのですか」と平気で言ってくれる人がいないと、日本人だけではそういうことは言わないのです。

私はあるとき、ある事情で、日本の上場会社の取締役をやってくれということで、4年間就任したことがありました。そのとき、まだ時代が早かったのですが、私がボードミーティングに出る前に、大変膨大な資料を会社がつくりました。日本企業は質素ですから、新品の紙を使わずに、図面を切ってコピーをつくってから、渡されるのです。「私は、こんなものは、いりません」と言いました。紙で写して反射させる、それで十分ですと。こんな資料をもらってもしょうがないし、もらっても捨てますと。「1枚あればいいのだから、こんなものはつくらなくていい」と言うのですが、お金を使わずに裏紙を使おうとしていながら、やっているコストを考えると無駄なことばかりなのです。日本国内のやり方は、自分たちで気づかないところが大変多いと思います。海外の空気を入れていかないといけないと、私は思っています。

講義の様子
講義の様子

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