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エフエム豊橋『天伯之城ギカダイ』第243回放送「微生物で動くマイクロマシンをつくる」機械工学系助教 永井萌土

紀元前から動物は利用され、牛、馬などの畜力(家畜の動力)は、文明の発達に大きな役割を果たしました。熱機関(エンジン)の登場とともに、単なる動力源としての利用は徐々に利用が減っていますが、今でも嗅覚や知能を活かした動物として、犬が社会で活用されています。

今、マイクロサイズの機械(マイクロマシン)の中で、微生物(顕微鏡で観察しないと見えない生物)を活用する動きが始まっています。微生物はその小型な体内に、運動器官(アクチュエータ)、受容体(センサ)、代謝経路(変換回路)を融合して、外部からエネルギーを取り込み生活し、細胞分裂による増殖も可能です。これは非常に精密な機械で、同じもの、その一部の機能を持つ機械ですら、人為的な作製は極めて困難です。ここでこの高機能な微生物を、生きたままマイクロマシンの中で活用させます。

これまで半導体加工技術を利用して、マイクロマシンが作製され、日常生活で活用されています。主に静電気力や磁力の力でこれを動かします。外部に大きな回路が必要となり、更なる小型化は難しい課題がありました。そこで私達は既に高機能な機械である微生物をそのまま活用することに着目しています。微生物を人工の構造物と融合して、バイオハイブリッドシステム(下記参照)を創成し、高機能なマイクロマシンを作製します。

特に私達は、動物的な単細胞生物のツリガネムシの運動で動くマイクロマシンを作製しています。ツリガネムシは釣鐘状の体を持っています。中学の理科の教科書にも出てくる生物で、池や川などで見つかります。生きているツリガネムシは2種類の面白い運動を行います。 ①約100ミクロンのフィラメントで、縮んだり<ミリ秒単位>、伸びたり<数秒単位>を繰り返します。この細胞膜を処理し、カルシウムイオンを加えることで、意図的に伸び縮みを制御することができます。この直線運動を利用して、微小な流れを切り替える素子を作製しています。②直径約200ナノメートル、長さ約10ミクロンの複数の繊毛を持ち、規則正しく動かすことで、溶液中の流れを集めて捕食します。この流れを利用して、微小空間での流れを撹拌するマイクロミキサ、液体を輸送するマイクロポンプとして利用します。

作製した素子は、携帯型バイオセンサに使用可能です。さらに長期的には、これらの生き物を活用して、感じ、考え、動くことのできる機械を作製することを研究の目標にしています。

『今日から使って欲しい業界(専門)用語』 「バイオハイブリッドシステム」

ハイブリッドは2つの異質なものを組み合わせ、1つの目的を成すものです。異なる2つ以上の動力源を持つ「ハイブリッドカー」が有名です。ここでのバイオ ハイブリッドシステムとは、工学的に作製した人工の構造物と生きている生物を組み合わせて用いるシステムです。これにより生物の利点を活かしたシステムの 作製が可能になります。


[初版作成]:2013-03-18 [最終改定]:2013-03-18

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