開学40周年記念事業

文字サイズ
検索

エフエム豊橋 『天伯之城ギカダイ』第201回放送「昆虫-微生物間の驚異の共生系を利用した技術革新」エレクトロニクス先端融合研究所 中鉢 淳准教授

エレクトロニクス先端融合研究所 中鉢 淳准教授への取材は5月17日に行いました。

私たちの大切な食糧となる農作物を病気や害虫から守るため、農薬は大切な役割を果たしています。しかし一方で、既存の農薬の多くはヒトを含む多くの生物にとって有害であり、散布する際に中毒事故を招いたり、生態系に悪影響を及ぼしたり、食物上に残留することで健康被害を及ぼしたりする負の側面も持っています。こうした問題への新たなアプローチとして、私たちは、昆虫の持つミクロの共生系に注目しています。

昆虫には「菌細胞(bacteriocyte, mycetocyte)」とよばれる特殊な細胞を持ち、この中に、相利共生細菌を保有しているものがいます。こうした細菌は、虫の親から子へと数千万年以上にわたって受継がれ、その過程で多くの遺伝子を失い、宿主と一体化するなど、ミトコンドリアや葉緑体といったオルガネラ(細胞小器官)と同様の特徴を持つため、複数生物間の融合機構の解明に絶好のモデルといえます。また、この共生系は、アブラムシやツェツェバエなどの重要な農業・衛生害虫の生存に必須である一方、我々ヒトを含む周辺環境中の他の生物には存在しないため、選択性が高く、安全で効果的な新規防除法の標的としても有望です。私たちの研究室では、多様な手法を駆使して菌細胞内共生系の存立基盤を解明し、新規防除法の開発につなげることを目指しています。

また、こうした共生細菌類は、昆虫の細胞内という特殊な環境を利用しながら、宿主昆虫に何らかのメリットを与えるユニークな生命体であり、人類にとって有用な物質を得るための遺伝子資源としても注目されます。実際、私たちの先行研究などにより、昆虫共生細菌の中には強力な生理活性物質を生産するものがあることが分かって来ました。様々な共生系について解析を進めて有用物質を探索し、医薬品などの開発につなげることも、私たちの重要な目標のひとつです。

『今日から使って欲しい業界(専門)用語』 「菌細胞(bacteriocyte, mycetocyte)」

細菌などの微生物を収納・維持するために分化した、特殊な昆虫細胞。こうした細胞の中に微生物が永続的に共生しているシステムを菌細胞内共生系と言い、私たちの研究室の主要な研究対象となっています。


[初版作成]:2012-6-12 [最終改定]:2012-6-12
広報部会

ページトップへ