豊橋技術科学大学

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栗田 弘史(くりた ひろふみ)

所属 応用化学・生命工学系
職名 准教授
専門分野 大気圧プラズマ応用、静電気応用、細胞工学、分子生物学
学位 博士 (工学) (豊橋技術科学大学)
所属学会 応用物理学会、日本分子生物学会、静電気学会、プラズマ・核融合学会、日本酸化ストレス学会、日本生物物理学会、日本毒性学会、日本MRS
E-mail kurita@chem
※アドレスの末尾に「.tut.ac.jp」を補完してください
研究者情報(researchmap) 研究者情報

研究紹介

電界や大気圧プラズマを細胞や生体に作用させると、例えば細胞膜に可逆的に穴を開けて遺伝子などを人為的に細胞内に入れたり、さらに強い電圧を印加すると微生物を殺滅させたりできます。それらのメカニズムの分子・細胞レベルでの解析や、目的の効果を得るための制御方法について研究を進めています。また、電界や流体力学的な力などを組み合わせると、1分子のDNAや1個の細胞を生きた状態で観察・操作・計測できたり、静電気力により油中に微小な水滴を生成・操作できたりします。具体的には1分子のDNA上で起こる生化学反応を観察・計測したり、油のなかに水滴を生成して微小反応場として利用する技術とその応用について研究を進めています。

テーマ1:大気圧低温プラズマと生体分子および細胞との相互作用

概要

 近年、生体や生物組織に直接照射することが可能な大気圧低温プラズマの生成技術が開発され、滅菌・殺菌や癌細胞選択的な細胞死誘導 (アポトーシス誘導)に効果があるといった報告がなされています。しかし、これらの研究成果について試行錯誤的に得られたものが多く見受けられ、生体分子・細胞・組織・個体など各階層に対してプラズマ照射が及ぼす定量的な影響評価が求められています。そこでプラズマ照射による生体高分子への影響をさまざまな方法で定量化したり、特にヒト由来の培養細胞株の細胞応答を解析したりしています。

主な業績

◆ S. Arai, et al., Japanese Journal of Applied Physics, Vol. 61, 096003 (8 pp.), Sept. 2022.[IOP]
◆ N. Gaur, et al., Journal of Physics D: Applied Physics, Vol. 54, 035203 (11 pp.), Jan. 2021.[IOP]
◆ H. Kurita, et al., PLOS ONE, Vol. 15, e0232724 (15 pp.), May 2020.[PLOS]
◆ E. Szili, et al., Journal of Physics D: Applied Physics, vol. 50, 274001 (15 pp.), July 2017.[IOP]
◆ H. Kurita, et al., Applied Physics Letters, vol. 107, 263702 (5 pp.), Dec. 2015.[AIP]

キーワード

大気圧プラズマ、プラズマ医療

テーマ2:高電界による細胞への外来分子導入技術の開発

概要

 細胞や生体に電界を極短時間作用させると、細胞膜に可逆的な穴を開けることができます。この現象はエレクトロポレーション (electroporation)と呼ばれ、細胞膜を本来通過できない外来物質を人為的に細胞内に導入することができます。エレクトロポレーションは遺伝子導入技術のひとつとして確立されており、遺伝子や細胞の機能解析をはじめとする生命現象の解明に留まらず、医療分野や農林水産分野などでも応用されています。エレクトロポレーションも含めて様々な外来分子導入技術がこれまでに開発されていますが、それぞれに一長一短があり、高い細胞生存率と遺伝子導入効率を兼ね備え、そのうえで高い安全性や低コスト化が要求されています。
 本研究室では、絶縁油中に設置した電極対の間に細胞と外来分子を内包した水滴を滴下し、数kV/cmの直流高電界を印加して水滴内部の細胞に対して穿孔を生じさせる、従来とは異なる電気的導入法を開発しました。細胞の種類によって細胞生存率や遺伝子導入効率は異なるものの、現在流通しているエレクトロポレーターと比較して遜色ない性能を示しました。この外来分子導入技術について、導入機序の解明や性能向上に向けた検討などを行っています。

主な業績

◆ Y. Tsurusaki, et al., PLOS ONE, vol. 18, e0285444 (16 pp.), May 2023.[PLOS]
◆ Y. Watanabe, et al., Sensors, Vol. 22, 2494 (13 pp.), Mar. 2022.[MDPI]
◆ H. Kurita, et al., PLOS ONE, Vol. 15, e0243361 (18 pp.), Dec. 2020.[PLOS]
◆ T. Ishino et al., Journal of Veterinary Medical Science, Vol. 82, pp. 14-22, Jan. 2020.[J-STAGE]
◆ H. Kurita, et al., Biochemistry and Biophysics Reports, vol. 8, pp. 81-88, Dec. 2016.[ScienceDirect]
◆ H. Kurita, et al., PLOS ONE, vol. 10, e0144254 (15 pp.), Dec. 2015.[PLOS]
◆ A. Asada, et al., IEEE Transactions on Industry Applications, vol. 49, pp. 311-315, Jan. 2013.[IEEE Xplore]

キーワード

エレクトロポレーション、油中水滴、微小反応場、遺伝子導入

テーマ3:1分子DNAの観察・操作・計測

概要
1分子DNAの観察・操作・計測

 1分子DNAを観察する方法としては、電子顕微鏡や原子間力顕微鏡を用いる方法などがありますが、蛍光色素でDNAに目印をつけると、蛍光顕微鏡視野内ではその目印を頼りに水溶液中のDNAを容易に観察することができます。水溶液中でDNAはブラウン運動により尺取虫のように形を変えていて、その様子をビデオカメラで捉えることが可能です。このようにして可視化した1分子DNAを解析しやすいように引き伸ばしたり、DNA (紐)の末端だけを固定したりする1分子操作を行っています。この操作は表面処理や光ピンセット、マイクロ流路など様々な要素技術を組み合わせることにより実現されます。またDNAは一様に負の電荷を帯びており、静電気力による操作も可能です。1分子DNAの持つ遺伝情報の解析やDNA-タンパク質間相互作用の解析において効果的な1分子操作・計測技術の検討を進めています。

主な業績

◆ H. Kurita, et al., Japanese Journal of Applied Physics, vol. 53, 05FR01A (4 pp.), May 2014.[IOP]
◆ H. Kurita, et al., Applied Physics Letters, vol. 99, 191504 (3 pp.), Nov. 2011.[AIP]
◆ H. Kurita, et al., Chemical Physics Letters, vol. 493, pp. 165-169, June 2010.[ScienceDirect]
◆ H. Kurita, et al., Journal of Fluorescence, vol. 19, pp. 33-40, Feb. 2009.[SpringerLink]
◆ H. Kurita, et al., Journal of Biomolecular Structure and Dynamics, vol. 25, pp. 473-480, Apr. 2008.[Taylor & Francis]

キーワード

1分子DNA、蛍光観察、光ピンセット、微小操作

担当授業科目名(科目コード)

基礎生命科学3, 4
生命科学3
応用生命科学4
理工学実験
化学・生命実験
分子細胞生物工学特論
生命工学特論I

その他(受賞、学会役員等)

受賞等
◆ 2011年9月 静電気学会 論文賞
◆ 2013年3月 第14回静電気学会春期講演会 エクセレントプレゼンテーション賞
◆ 2013年6月 第66回日本酸化ストレス学会学術集会 優秀演題賞
◆ 2014年9月 静電気学会 論文賞
◆ 2015年2月 IEEE Creativity and Innovation Prize Paper Award 


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