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3月23日に平成27年度大学院修了式・学部卒業式をアイプラザ豊橋にて挙行しました。

イベント報告 | 2016年3月25日


3月23日に平成27年度大学院修了式・学部卒業式をアイプラザ豊橋にて挙行しました。
大西学長並びに博士後期課程修了者及び論文博士はアカデミックガウンを着用し、式に臨みました。

式では、博士後期課程修了生17名、博士後期課程論文博士1名、博士前期課程修了生411名及び学部卒業生455名に対して学位記が授与されました。


大西学長からの式辞は次のとおりです。


卒業生の皆さん、おめでとうございます。
豊橋技術科学大学は、本日884名の卒業生を送り出します。大学や大学院を終えて、社会に出る卒業生にとっては大きな節目の日を迎えました。また、大学院の博士前期課程や博士後期課程に進む皆さんにとっては、気持ちを新たに次の段階へ進むことが重要であるということから、やはり節目の日です。学業で成果を上げた皆さんの努力に敬意を表し、祝福します。
お子様方の晴れの日を待ち望んでおられたご家族の皆様には心からお祝い申し上げます。また、卒業生を指導し、支援してこられた本学教職員の皆様のご尽力に改めて感謝申し上げます。
加えて、本学は、国立大学法人として、運営費交付金をはじめとして国からの多額の支援を受けています。これらは言うまでもなく日本国民の租税を原資としており、この機会に広く日本国民の皆さんの支援に感謝するとともに、卒業生の皆さんが、これから社会に出たり、大学院に進学して、本学で学んだ成果を生かすことによって、国民の期待に応えていくことを望みます。

この機会に、これからの科学技術の話をしましょう。私は、国の総合科学技術・イノベーション会議の議員を務めています。この会議は、5年に1度、「科学技術基本計画」を作成することを役割の一つとしています。今年度は、基本計画作成の年に当たり、4月から執行される第5期科学技術基本計画ができたところです。科学技術に関する計画ですから、科学と技術の振興を図るものであることは言うまでもありません。新たな計画では、特に、「ソサエティ5.0」という言葉でこれからの時代を表現しました。その意味するところは、「狩猟社会」、「農耕社会」、「工業社会」、「情報社会」に続く5番目に「文明社会」が来るということです。
さて、どんな社会でしょうか?
計画では「超スマート社会」という言葉で、その社会を表現しています。人間の脳と同じような、あるいは場合によってはそれ以上の働きをするコンピュータが、社会のあらゆる場面で働くようになる社会を表しています。例えば、AI、人工知能もその社会の一角を占めることになります。
AIといえば、先日の報道で、囲碁で世界トップのプロ棋士がコンピュータソフトに負けたとありました。将棋では、しばらく前に、プロがコンピュータソフトに負けたのですが、将棋よりも盤が大きくて、打つ手の選択肢が桁違いに多い囲碁は、人工知能にとっても難しく、プロ棋士に追いつくのはかなり先のことと言われてきました。しかし、予想より、随分早く実現したという印象です。ゲームとはいえ、高度の知識集積と思考を要する分野での人工知能の画期的な発展を見ると、世界が変わっていくことを感じずにはいられません。
さらに今後、高度に発達した人工知能と身体に似た動作を行えるロボットが組み合わされると、まさに人間のように考え、行動するロボットができるのも夢物語ではないかもしれません。今回の囲碁の対局では、相手の打ち手の認識や着手では、人間がコンピュータの介添えをしたのだと思いますが、もしロボットに囲碁ソフトのAIが組み込まれれば、相手の打ち手を認識して、それに応じて自ら着手そのものをすることも可能となります。こうした、認識力や判断力と運動を備えれば、様々な応用の可能性が広がるのは容易に想像できます。もちろん、人を補助することもできるという意味で、身体に不自由のある人にとっては福音となるでしょうし、高齢などにより記憶力の減退を感じている人にとっては有難い助けになるともいえます。
AIをはじめとした分野で、科学技術がますます発達して、人の生活に欠かせないものとなる時代に、技術科学を学んだ皆さんの前途は明るいものであるとともに、社会からの期待も大きいことを自覚して、自信をもって、様々な場面で大いに活躍してください。

一方で、皆さんも、人間以上に記憶力や論理的思考力に優れ、さらに力強く、確実に行動するようなロボットが悪用されたらどうなるか、あるいは悪用と断言できないまでも、国家間の争い等の際に、軍事目的に使われたらどんなことが起こるのか、と考えることもあると思います。人間の行動の抑止力が、互いの存在や人間の尊厳を尊重する相互主義や人間主義をもとに成立しているとすれば、生命を持たず、しかし人と同じように考え行動できる機械の出現は、相互尊重という人類の普遍的な倫理観の存立基盤を崩すものとなりかねません。

AIロボットのような科学技術の利用には、我々の日常生活の場面で利用すること、つまり民生的な利用と、軍事目的な利用という大きく二つの利用形態があるとして、これをデュアルユースと呼んでいます。場合によっては、民生と軍事という分類とは別に、善意に利用することと、悪意に利用することの二つがあるという分類もあり得るかもしれません。
皆さんもご承知と思いますが、ノーベル賞はスウェーデン人のアルフレッド・ノーベルの遺言を基に、その莫大な遺産を使って運営されています。ノーベルはどういう人だったかというと、類い稀な発明家で、特にダイナマイトの発明で巨万の富を築きました。ダイナマイトは、デュアルユースの典型例です。地盤の掘削などに威力を発揮し、人間の生活を豊かにすることに使われる一方で、武器としても使われます。ノーベルは、自分が武器を発明したことで、死の商人と呼ばれていることを気にして、物理学賞などの自然科学部門に加え、平和賞や文学賞からなる賞の設立を遺言にしたといわれています。
ダイナマイトのような典型的なものではなくとも、現代の科学的成果や技術的発展で、デュアルユースの可能性を持つものは少なくありません。現在、我々が日常の通信手段や情報収集手段として利用しているインターネットも、もともとは部隊間の連絡という軍事目的で開発されたものが民生的な利用となった例です。
科学の行方が様々である時に、科学者、特に、科学的基礎を踏まえた技術への応用や技術の革新を目指す皆さんのような技術科学を学んだ者は、デュアルユース問題に関心を持って、自分達の成果が何に使われるかということに、思いを致さなければならないと、私は考えています。先に例を挙げた人工知能ロボットは、人間のいないところで、人間のような活動ができるという点で、画期的なものです。しかし、自分の身を危険にさらすことなく、相手を攻撃できるというデュアルユースの面でもその画期性は発揮されます。このように考えると、我々は、AIの開発をどのように考えるべきか、なかなかの難問になります。

こうした混沌ともいえるようなデュアルユースの問題が存在する中で、現代の技術科学者はどうあるべきなのか?私は、皆さんには、学んだ技術科学を、どう社会に生かすのか、その役立ち方まで考えに入れた思慮深い技術科学者になってもらいたいと思います。換言すれば、解決を待っている社会の諸問題を、自ら解決するという気概を持って研究や仕事に当たって欲しいと思います。見渡せば、社会には解決を待っている問題が、身近なところにも存在します。私は、ちょうど1年前にタクシーの乗客として交通事故に遭い、まだ後遺症があります。事故の時、電信柱が目前に近づき、ぶつかると分かっているのに、この運転手はなぜ止まらないのかと思いました。それ以来、自動車の自動運転にはことのほか強い期待を持っています。
気分が落ち込んだときに、元気になる音楽を自分に合わせて奏でてくれるような楽器があればいいなと思っている人もいるかもしれません。高齢者にとっては、手や足など自分の動きをサポートする道具があれば、今よりも日々の生活が楽になるかもしれません。
是非、皆さんも、自分たちの技術科学は何の役に立つのかを熟考して、目的を立て、その達成に挑戦する気持ちを持ってもらいたいと思います。換言すれば、世のため、人のためになる研究・開発するという志を持つことです。そうすることによって、自分の思いとは異なる方向で、研究成果が利用されることは少なくなるはずです。

さて、本学は、今年10月に開学40周年を迎えます。第1回目の卒業生がそろそろ還暦を迎えるようになる歳月です。これを機に、伝統と飛躍を重んじる心と、先人や地域の皆様への感謝の気持ちを忘れないようにしたいと、改めて思います。
本学のスローガンに、「技術を究め、技術を創る」という言葉があります。技術を究めるとは、すなわち技術を科学的に探求することです。技術を支える科学的な原理や法則を解明して、技術の優位さを分析的に理解することです。そして、技術を理解することで、その応用や発展を図ることができるのです。これが技術を創ることにあたります。この建学の精神を忘れずに、皆さんは、何処にあろうと、日進月歩の科学的探究と技術革新の最先端に立つことを志して下さい。
こうした本学の伝統は、開学以来、本学で、学び、研究してきた先人から代々受け継いでより確かなものになってきました。「技術を究め、技術を創る」という精神と言葉を残した先輩に大いに感謝したいと思います。

最後に、豊橋の地について触れます。40年前に本学がこの地で開学するに当たっては、現在本学で特別顧問をされている神野信郎(かみののぶお)様をはじめとする地元の有志が、豊橋に理工系の大学を誘致しようと熱心に活動され、本学が豊橋に新設されました。そういう経緯があって、皆さんも経験されたと思いますが、地元の皆さんの本学に対する、あるいは、本学の学生に対する期待は強く、そして、常に温かく見守ってくれていると感じています。こうした環境の下で、本学が活動できていることにお礼を申し上げます。

本日、本学を卒業した皆さんの前途を祝し、式辞とします。

式の様子式の様子

学位記授与学位記授与

学位記授与学位記授与

学長式辞学長式辞

答辞答辞

吹奏楽団による祝賀演奏吹奏楽団による祝賀演奏

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