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新年挨拶

トピックス | 2016年1月 5日


2016年1月
学長 大西 隆


 皆様、新年明けましておめでとうございます。新しい年を迎えて、教職員の皆様や学生諸君をはじめ、本学に関係する皆様のご多幸と、ご健康を祈念します。

 本学は、今年開学40周年を迎えます。国立大学としては若いグループに入りますが、最初の卒業生が還暦を迎えることになるので、本学も社会に定着した存在になったといえます。特に、本学を豊橋に誘致してくださった地元の皆様、創設に尽力された諸先輩、そして、開学したばかりの本学を進学先に選んでくれた学生諸君に改めて感謝したい気持ちです。 一方で、我が国の大学は大きな試練を迎えており、40周年は、新たな出発という気がします。現在本学では40周年記念事業を行うべく、地元の皆様はもとより、支援して下さる企業、卒業生、本学関係者、保護者の皆様からご寄附を募っています。目標に達すれば、本学の研究、教育、そして学生の課外活動の環境整備が大いに進展することになります。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 さて、日本の大学はいくつかの大きな問題に直面しています。一つは少子化によって、大学に入る年齢層が極端に減少する恐れがあることです。2031年には、18歳人口は100万人を割り、2060年には、現在の半分程度になると推計されています。現在大学への進学者が毎年およそ60万人ですから、この時代になると、ほぼ全員が大学へ進学しない限り、現在の大学生数は維持できないことになります。18歳に差し掛かる頃には、それぞれ進路を考え、見合った教育や訓練、あるいは実践の道に入る人も多いので、全員が大学に行くことが社会にとって良いかどうか、疑問もあると思います。恐らく、多様な選択肢が用意され、それぞれ社会的分業の一端を担っていくことの方が適切といえるでしょう。そうなれば、少なくとも日本人の大学生数は現在よりは相当減少することになるので、大学関係者にとっては厳しい時代が到来することになります。
 もちろん、今後、大学進学率の増加、日本では現在は極めて少ない社会人学生の増加や海外からの留学生の増加など、日本の大学で学ぶ学生が増加する要因はあり、そのために大学人が努力しなければならないことはいうまでもありません。
 なかでも、留学生は、現在世界で400万人に達し、増加傾向にあります。しかし、日本で学ぶ留学生は13万人程度で頭打ち傾向にあり、日本人の海外留学者は6万人程度で減少傾向にあること、つまり、国際化の時代に十分に対応できていないのは大きな問題です。確かに、日本の人口は、世界で10番目の大国ですが、その数は1.27億人です。世界の人口は既に73億人に達しているので、2%に満たない程度です。つまり、国内だけではなく世界を対象に考えると無限に可能性が広がっていきます。
 一昨年から取り組んできたスーパーグローバル大学創成事業は、今年、いよいよ第3年次編入生の入学試験を行うことになります。グローバル学生宿舎の建設にも着手します。このプログラムを通じて、外国人留学生の割合を27%、日本人学生の留学体験者を20%に高めようとしていることは大きなチャレンジです。単に留学生や留学体験を増やすことだけではなく、当然、国際的に評価される教育研究内容、誰もが主役という意識で過ごせるキャンパスを実現することでもあるので、様々な意味での飛躍が求められます。私は、国際化が、結局は英語圏化であって、米英など英語圏大国に有利で、日本をはじめとする非英語圏は不利であるとは必ずしも考えません。もちろんコミュニケーションツールとしての英語の習得という点では、英語を母国語とする国々に優位性があるのは否めませんが、グローバル化の根本は多文化共生ですから、言葉を通じた意思の疎通だけではなく、文化、歴史、宗教、思想の相互理解によって、多くの人々との間で、人間として理解し合える関係を築いていくことが根本的に大事なことと思います。もちろん、我々がテーマとする工学、技術科学は最終的には製品や原理の形をとるので、言語を超えた存在であることはいうまでもありません。
 その意味で、本学のスーパーグローバル大学創成事業は、バイリンガル化を超えた、多文化共生や技術科学を通じた相互理解の壮大な試みとなる必要があり、その先に、世界の発展、安定や平和が見えてくるものでなければなりません。

 私は、日本学術会議の会長として、1月7日に、学術フォーラムを企画しています。国立大学と私立大学トップ、文部科学省の高官、経済界の代表、さらにメディアや民間の有識者に集まっていただき日本の大学改革について語り合います。その狙いは、人材育成,基礎的研究や応用的研究の拠点として社会発展の原動力となってきた大学の役割を改めて多くの国民に知ってもらい、国全体で大学を育てていく風土を構築していくためです。私も議員を務める総合科学技術・イノベーション会議は、昨年12月に第5期科学技術基本計画をまとめ、その中で、平成28年4月からの5年間における国の科学技術投資を、これまでの5年間の14%増、総額で対GDP比1%に相当する26兆円とする目標を設定しました。もちろん政府の投資の中には国立大学に対する運営費交付金がすっぽりと含まれます。こうした議論をさらに確固たるものとしていくには、大学自身が実績を上げて、社会の要請に応えている姿を示すことが必要です。

 こうしたことから、本学は、本年、大きな飛躍を遂げようとしています。今年4月から国立大学では、第3期中期目標・中期計画がスタートしますが、本学の目標と計画の骨子をお話したいと思います。

 それは、研究と教育で一段と機能強化を図る仕組みを整えることです。 研究面では、これまでのエレクトロニクス先端融合研究所や諸センターの研究活動実績を踏まえて、4月から、新たに技術科学イノベーション研究機構(仮称)を発足させます。現在のエレクトロニクス先端融合研究所を中心に、昨年発足させたカリフォルニア工科大学と産業技術総合研究所の研究者、さらに今年発足予定のマサチューセッツ工科大学の研究者との共同ラボをはじめとする研究ラボや研究センターが、そのもとで活動することになります。その際に、大学だけで完結する研究スタイルではなく、イノベーションを求めて、企業における研究開発の諸組織等と連携して研究を行う産学連携を強化して、本学が多様なシーズや場を提供することにします。
 教育面では、博士課程教育リーディングプログラムやスーパーグローバル大学創成事業のプログラムをさらに強力に推進するとともに、高等専門学校や長岡技術科学大学とともにペナンキャンパスを教育拠点として活用したり、積極的に各国の大学等と連携します。社会連携の分野では、先端農業、防災をはじめとする多様な人材育成プログラムを進めていきます。

 本学がもっとも重視しなければならないのが、高等専門学校(以下「高専」と表記。)との連携です。これまで述べてきた、大学の抱える問題、課題、さらに本学がこれから行おうとする挑戦は、具体的には、質の高い高専卒業生を中心とした本学の学生諸君とともに取組むことになるのです。その意味では、全国57校の高専と本学は一体的関係にあり、高専の発展と本学の発展は同義ともいえます。高専教員との共同研究、高専生への様々な学習・研究機会の提供等のために、本学は積極的に取り組むことによって、高専から技科大へという人材育成の流れをより高質なものにしていきたいと思います。
 運営費交付金の形で、国から手当される財源は、本学運営の重要な基盤ですが、こうした改革に十分なものといえるわけではありません。民間や社会組織との連携、つまり、社会の中の大学の役割を高めて、社会組織の協力を得ることで、何としても、機能強化の改革における成果を上げていきたいと思います。
 研究と教育の機能強化を支える上で、年末に嬉しいニュースが飛び込んできました。本学の図書館を研究交流やアクティブラーニングの場として機能向上させるための予算が政府案に盛り込まれたというものです。是非この改修事業を実現したいと思っています。

 最後に、豊橋技術科学大学の全ての構成員の学習、研究や仕事をはじめとする様々な活動をより充実したものとするための取組みに触れます。その基礎となるのは健康です。本学構成員の心と体の健康をもっとも心配してくださっている産業医でもある小島俊男教授が、構成員の健康問題に警鐘を鳴らしています。私はとても大事なことと思っています。実は、私が就任以来続けている学生との意見交換で、友人達の食生活について心配している学生が何人かいました。栄養のバランスが偏っているように見える友人が多いというのです。また、健康支援センターを訪れる学生も決して少なくありません。もちろん訪れて様々な問題を率直に投げかけてくれることは大歓迎で、そのための体制強化を厭うものではありません。しかし、こうした事実は、より根本的な心と体の健康づくりに取り組む必要を示唆していると考えています。実はその対象は学生諸君だけではありません。教職員を含めた本学の全ての構成員が、学習、研究、仕事等に長く専念できる健全な心と、強い、あるいは粘りのある体力を持つための取組みを進めることを今年の大きな課題にしたいと思っています。健康を維持して、より積極的に学習、研究や仕事等に取り組むことができれば、本学の実績はもっともっと向上するに違いありません。

 開学40周年を迎える2016年が、本学の教育研究活動の更なる発展と、学生・教職員の健全な心と体づくりの成果をより一層高める年となることを祈念して年頭の挨拶とします。

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