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3月22日に平成24年度大学院修了式・学部卒業式をライフポートとよはしにて挙行しました。

イベント報告 | 2013年3月25日


    s_h24graduation_1.jpg 学位記授与
     
    s_h24graduation_2.jpg 学長式辞  
     
    s_h24graduation_3.jpg 卒業式の様子  
     
    s_h24graduation_4.jpg 答辞  
     
    s_h24graduation_5.jpg 吹奏楽団による祝賀演奏  
     
     

3月22日に平成24年度大学院修了式・学部卒業式をライフポートとよはしにて挙行しました。

学長及び博士後期課程修了者はアカデミックガウンを着用し、式に臨みました。

式では、榊 佳之学長から、博士後期課程修了生16名、博士前期課程・修士課程修了生404名、学部卒業生411名に学位記が授与されました。
 

学長からの式辞は次のとおりです。

皆さん、ご卒業、誠におめでとうございます。本学の全教職員、在校生一同を代表致しましてお祝いを申し上げます。また卒業生の皆さんが今日の日を迎えられますのはご家族や恩師をはじめ沢山の方々支えがあってのことであります。卒業生の皆さんはご家族、恩師をはじめお世話になった方々に感謝の気持ちを込めてこの式に臨んでほしいと思います。また、卒業生のご家族、ご関係者の方々にも心よりのお祝いを申し上げます。


さて、本日は皆さんが全ての課程を修了し、本学を巣立つ記念すべき日でありますが、「卒業」が英語では”Commencement“、即ち「始まり」と呼ばれるように、本日はまたこれまで学んだことを土台として産業界や大学院など新しい道に歩み出す門出の日でもあります。皆さんの多くが本学に入学された2年前の入学式で私は皆さんに「次の日本を担うのだと言う高いモチベーションを持って勉学してほしい」との期待を皆さんに伝えました。そして今日、この新しい門出の日にあたり、皆さんが「次の日本を担うのだと言う気概を持って人生を歩まれること」を祈念して一言メッセージを送りたいと思います。


既にご存知のように、日本社会、国際社会が大変に流動的な状況におかれています。国際社会では環境・エネルギー問題、食糧・人口問題などの人類的課題に加えて、著しいグローバル化の進展によって、ヨーロッパの金融不安、中東各地の政治的混乱などが世界の経済など諸活動に直接、間接の影響を与え、我が国でもエネルギーコストの上昇、企業の業績の悪化などに繋がっています。更に日本固有の問題として、2年前の東日本大震災からの復旧・復興、特に福島原発事故の処理を抱え、更に中国や北朝鮮との緊張関係、TPP交渉など対外的に対応を迫られる諸問題もあります。皆さんはこれから歩み出す社会が不確定、不安定で流動的な状況にあることに不安感を覚えるかもしれません。しかし、若く、これから伸びてゆく皆さんには、これをむしろ「チャンス」ととらえてほしいと思います。


新しく誕生した安倍政権は「新成長戦略」を掲げ、日本がこれまで培った高い科学技術力を背景に、社会・産業の改革、即ちイノベーションに繋がる何か斬新なことを始めなければ日本はこのまま衰退するとの危機感を示しています。この危機感は政府だけでなく企業、社会でも共有されていると思います。そこでは様々な力が求められますが、特に技術や科学に携わる者の果たす役割は大きく、今までの枠にとらわれない、斬新な発想や行動が求められています。そしてそれを実現できるのは皆さんのような若いエネルギーを持った人材であると思います。これからの社会には皆さんのような若い技術者が今まで以上に力を発揮できるチャンスがあるのです。


これまでも日本は若い技術者たちのエネルギーで活力を得て成長してきたと思います。例えば、今とは時代背景が違いますが、太平洋戦争後の日本社会が流動的な復興期に、ソニー、ホンダなどの今日の日本を代表する企業の出発点となる会社が20代、30代の若い技術者によって立ち上げられました。ソニーを例にとれば、創業したのは井深大と盛田昭夫の二人の技術者、井深は36歳、盛田は皆さんと変わらない24歳で、従業員20人余りの会社でした。しかし確かな技術力で世界最小のテープレコーダーを開発し、一躍世界に名を知られます。その後もソニーは斬新なアイデアと高い技術開発力でウォークマンやプレイステーションなどを開発し世界の企業に成長したことはご存知のことと思います。


この他にも数多くの若い技術者たちが今日の日本の産業を盛り立て、活力ある日本社会をつくり上げてきました。本学ではプレステージレクチャーとして液晶テレビ、リチウムイオン電池、光触媒など日本が世界を牽引した数々の技術を開発したパイオニアを招き、その経験、体験を伺う講義を行っていることはご存知でしょう。それらはいずれも皆さんがこれから社会を歩まれる上で大切なメッセージが込められたお話しでした。少し振り返ってみましょう。例えば液晶テレビの開発を成功させたシャープの船田文明氏、入社直後から液晶ディスプレーに取り組み、入社15年で初の液晶カラーテレビの開発に成功します。船田さんは講演の中で、実は液晶テレビ開発の途中からは会社の許可が下りなくなり、業務が終わってから自力で開発研究を続け、成功にこぎつけたとお話しされていました。同じような話はハイブリッドカー、ハードディスク、携帯電話などハイテク機器に必要不可欠となっているネオジウム磁石を開発した佐川眞人博士からも伺いました。佐川博士は富士通でネオジウム磁石の開発を目指して10年余り、手がかりをつかんだところで会社から研究打ち切りを告げられますが、平日の深夜、休日を使って開発を続けて、最後は他の会社に移って成功に結び付けたと話されました。この二人に、そして他のお話にも共通するのは、若い頭が生み出す新鮮なアイデア、それを実行に移す確かな技術力と行動力に加え、困難に出会ってもやり遂げる気力、熱意、努力であったと思います。


もう一例、皆さんが人生を歩む上で学ぶことの多い例として、昨年12月に本学のプレステージレクチャーでお話し頂いたIBMのフェローである浅川智恵子博士のお話しがあります。浅川さんは中学生のころに水泳の訓練中の目のけがが原因で失明しましたが勉強を続け、大学で英文学を学んだ後、一念発起して点字の英文翻訳機の開発に取り組み、IBMに入社します。そして以来、目が見えないと言う大きな障害を乗り越えて、コンピュータの画面を音声に変換するホームページリーダーや音声ブラウザーなど目の不自由な人や高齢者、貧困で学校に行けないために字の読めない人達など弱者のためのITバリアフリー技術を次々と開発されてこられました。誰もがなしえなかった弱者のための画期的なITバリアフリー技術の開発の功績でIBMの技術者として最高の地位であるフェローの称号が授けられています。失明という厳しい困難に立ち向かい、その困難を、適切な表現かわかりませんが、「チャンス」と捉えて、全く新しい世界を拓いた浅川さんからの若い人々へのメッセージは「あきらめなければ途は拓ける」という味わい深いものでした。


皆さんはこれから本学で学んだことを土台として技術者、技術開発者として社会でそれぞれの人生を歩まれることでしょう。それは決して平坦な道ではなく、様々な課題、困難に出会い、時には挫折しそうになることもありましょう。しかし、今お話しした先人達のように自らの力を信じ、強い熱意と行動力によってそれぞれの課題に立ち向かい、またとても大きな困難に出会った時も浅川さんの言う「あきらめなければ途は拓ける」という強い心と、高い志、気概を持って人生を歩んでほしいと思います。若い、気力に満ちた皆さんが次の時代の日本社会を担ってくれることを祈念して私の式辞といたします。
 

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