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平成24年度テーラーメイド・バトンゾーン教育プログラム「開発リーダー特論」第6講義を開催しました。

イベント報告 | 2012年7月 9日


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 講演する戸田氏
 
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 講演の様子

7月5日にA2-201講義室にて、テーラーメイド・バトンゾーン教育プログラム「開発リーダー特論」第6講義を開催しました。
 

今回の講義は、『MRJを世界の空へ-技術立国日本の航空機産業の復活―』と題して、三菱重工業株式会社特別顧問の戸田信雄氏を講師にお迎えし、国産初のリージョナルジェット機MRJの開発に至る経緯として国内航空機産業のこれまでの歴史や現状、航空機開発が産業界に及ぼす波及効果、そしてMRJの特徴である世界最高レベルの運航経済性や客室快適性とともに今後の展望についてお話いただきました。

はじめに、航空機の定義と分類、航空機の誕生と発達の歴史、日本の航空機の歴史、特に戦後の日本の航空機技術の発展過程について総括説明がありました。40年にわたり戦闘機、民間機、ヘリコプター、ロケット等の開発に従事された戸田氏のご経験から、1930年半ばから1940年にかけての日本の戦闘機の技術は、軽量性と空力特性において群を抜いていたこと、特に三菱96式陸上攻撃機『海軍』による世界一周飛行を成し遂げ、国産航空機の信頼性を内外に実証し得たこと、その際、既に全自動飛行技術が出来上がっていたこと、戦後、米国からの抑制圧力があったものの国産戦闘機開発によって航空機先進基盤技術力を磨き、YS11に始まる旅客機開発を進めたこと、しかし結局事業採算の行詰りから中止を余儀なくされた無念さなどを紹介されました。

 

しかし、それらの経験が活かされ、革新的な環境性能、快適性能、経済性能を持ったMRJ開発を決断できたとのことでした。MRJとはMitsubishi Regional Jetの頭文字ですが、Mの文字には全日本の総合技術力の意味を込めたみんなのMという意味もあるとのことでした。MRJは90席クラスと70席クラスの2機種で構成されています。両機は同じ主翼、尾翼、エンジン、システムを採用し、また操縦機能、メンテナンス、スペアパーツも共通性を持たせているとのことです。


航空機産業は他産業への波及効果が大きいこと、産業の裾野の育成や新規雇用の創出が期待できること、今後の年率5%の成長産業になり得ることなどから技術立国日本の進むべき道との考えを述べられました。ただ、事業規模は日本においては年間約1兆円、参考までに米国では14兆円、イギリス、フランスでは約3兆円であるので、自動車産業が国内で約45.8兆円であることと比較するとそれほど巨大産業ではないことから産業として息長く育成していくことが肝要とのことです。


戸田氏自身の開発の歴史は決して平坦ではなかったようでしたが、その中から、失敗を多くした人こそが成功できること、「Impossible」を感じたとき、「I’m possible」と思えばよいことという人生訓をご披露いただきました。


現代日本航空機発達史を築かれてこられた方のお話であるからこその、航空機技術開発と技術者魂の核心に触れたご講義をいただき、学生はもとより、教職員、さらに学外の聴講の方々すべてが、大変奥深い勉強をさせていただきました。

 

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