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3月23日に平成22年度豊橋技術科学大学大学院修了式・学部卒業式を挙行しました。

イベント報告 | 2011年3月23日


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学位記授与
 

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答辞
 

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吹奏楽団による祝賀演奏

 

3月23日に平成22年度大学院修了式・学部卒業式をアイプラザ豊橋にて挙行しました。

 

式に先立ち、このたびの東北地方太平洋沖地震で被災された方々に対し黙祷が捧げられました。

 

式では、榊 佳之学長から、博士後期課程修了生14名、修士課程修了生362名、学部卒業生464名に学位記が授与されました。


学長からの式辞は次のとおりです。

 

皆さん、ご卒業、誠におめでとうございます。本学の全教職員、在校生一同を代表致しましてお祝いを申し上げます。また卒業生の皆さんが今日の日を迎えられますのはご家族や恩師をはじめ沢山の方々支えがあってのことであります。卒業生の皆さんはご家族、恩師をはじめお世話になった方々に感謝の気持ちを込めてこの式に臨んでほしいと思います。一方、3月11日に起こりました東北地方太平洋沖地震の影響で本日ここに出席できない卒業生が4名おられます。また諸君の中にはご家族などが被災された方がおられることも報告を受けております。それらの方々には心よりのお見舞いを申し上げます。
 

さて、本日皆さんは大学を卒業され、社会人として新しい第1歩を踏み出されますが、その第一歩を踏み出す日本社会は、今大震災の被害に対して国を挙げて復旧に取り組みを始めています。そして中期、長期的には今回の災害を教訓に新しい社会の構築へ向けて動き出すでありましょう。この流れの中で皆さんも社会人として、また技術や科学のプロとして担うべき役割を果たす自覚を持って社会への一歩を踏み出してほしいと思います。
 

先ず当面はこれから勤める企業、或いは進学する大学院で本来の仕事に務めつつも日本社会の構成員の一人として災害の復旧にそれぞれができる貢献をすることが求められます。先週、本学では学内外で様々に活躍した学生諸君の表彰を行いましたが、そこでは社会のために、仲間のために何ができるかを自ら考え、自ら行動する学生諸君の積極的な姿勢を見ることができ、大変に嬉しく、また心強く感じました。学生諸君の間では既に震災への義援金の募金や被災学生の生活サポートなどへの様々な動きが始まっていると聞いています。「自ら学び、自ら考え、自ら行動する」は本学のアドミッションポリシーでありますが、今回表彰された学生・団体だけでなく、折に触れて接する本学の学生の皆さんの様子からも、全学的に自ら考え、自ら行動する姿勢が育まれていると頼もしく感じています。この「自ら考え、自ら行動する」積極的な姿勢は大学だけでなく、これから社会人として生きる上でも大切な心構えとなるものであります。皆さんが本学で育んだこの姿勢を一層発展させ、社会で活躍、貢献されることを期待しています。

災害からの復旧に続いて、災害に強い新しい社会の構築が始まります。そこでは本学で学んだ皆さんに技術や科学の専門家、プロとしての役割が期待されています。現代社会は高度な技術に支えられた複雑な社会であり、技術者、科学者はそれを支える重要な役割を担っているのです。皆さんはそのような重要な役割を果たすことへの誇りを持つとともに、社会への責任を負っていることも自覚してほしいと思います。今日では新しいひとつの技術が大きく社会を変える可能性もあれば、ひとつの技術のトラブルがそれを基に動く社会の様々な活動、人々に影響するリスクもあります。例えば、今回の災害の中で、原子力発電所の災害は技術や科学に携わる専門家にとって大きな衝撃であり、深刻に受け止めなければならない事態となっています。放射線のリスクが避けられない原子力発電に対してはその危険性を防ぐ最高の技術、最高の管理システムが投入され、極めて安全度が高いと言われてきました。確かに今回の大地震でも福島でも、女川でも施設がつぶれることはありませんでした。しかし、福島では想定外の津波の影響とは言え、冷却系統が制御不能に陥ってしまいました。推定でものを言うのは危険ですが、技術面から見れば原子炉本体でないシステムの僅かなトラブルから大事に至った感がします。初動の緊急安全対策は万全であったのか、技術への過信はなかったかなど疑問や不安が残ります。担当していた技術者や管理者には何とも無念の思いがあるでしょう。しかし大きな社会的混乱を起こした事実は重く、二酸化炭素放出のないクリーンエネルギーとして期待されていた原子力発電全体にブレーキのかかることは避けられません。そして日本ばかりでなく世界のエネルギー政策、環境政策にまで大きな影響を与えることとなりましょう。
 

社会では技術の安全性に細心の注意がはらわれている例をあちらこちらで見ることができます。私が専門とする遺伝子研究の分野では遺伝子組換え技術が開発されたとき、研究者たちは直ちに国際的な会合を開き、その危険性を検討し、安全対策を講じていました。幸い今日まで問題を起こすことなく研究や産業活動に広く使われています。皆さんご存知のように、自動車、航空機、電気製品などではリコールが頻々と行われます。技術が決して万全でないことを認識しての対応です。日々、安全を確認、確保するのは企業、特に技術に携わる者の社会的責任であります。一度落とした信用を回復することがどれほど大変かもよく認識しなければなりません。皆さんは技術者、科学者としてこれから大いに活躍することが期待されていますが、今回、偶然に原発事故の混乱の中で卒業式を迎えたことを時々思い出し、その社会的責任を再確認してほしいと思っています。

少し重い話になってしまいましたが、責任の大きさに委縮してはなりません。技術者、科学者としての最大の役割は新しい技術やシステムを開発し、社会に貢献するところにあります。最後に少し元気の出る、諸君の先輩の話をしたいと思います。今開発中の最新式の航空機のエアバスA380は間もなく就航しますが、その完成には本学の卒業生の力が不可欠であったと言われています。エアバスA380はその巨大さのために主翼のフレームに極めて高度な加工が要求され、一時は製造が危ぶまれました。しかし世界で唯一、神奈川県の牧野フライス社の高精度工作装置がその加工をやり遂げることが判り、危機を乗り切ることができたと言われています。この世界最高の精密工作機械の開発責任者は沼津高専から本学に学んだ卒業生小池伸二さんです。また、携帯電話で写真を撮って送信もする「写メール」の生みの親の一人高尾慶二さんも本学の卒業生です。この他、皆さんの先輩には本学の先生方をはじめ社会の様々な方面で大活躍されている方が大勢います。今回の震災からの復興をバネに、日本は新しい社会を目指して国を挙げて動き出すことでしょう。皆さんは本学で学んだことに自信を持ち、諸先輩を手本とし、より良い日本社会を創り出すと言う高い志を持って社会への第1歩を踏み出してください。皆さんの前途が希望に満ちたものであることを祈念して私の挨拶と致します。卒業おめでとう!
 

学長式辞後、博士後期課程 機能材料工学専攻 ニック ヒシャムディン ムハマド ノール(NIK HISYAMUDIN MUHD NOR)さんから答辞が述べられ、吹奏楽団による祝賀演奏が行われました。

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