(4)教育の社会的効果等
 学生に対する教育効果:(データ1)で示したとおり,学生は基礎教育もさることながら,実践的専門教育を望んでいる。建設工学系が実験的に行ったまちづくり実践教育に対する学生の自己評価でもそれは明らかである(データ4)。本取組は,地域の生の課題をテーマに,地域の自治体,NPO等の民間組織とのインターラクティブな連携,協働を必須条件として,3つのプロジェクト型工房教育プログラムを,本学の教育の特色である「少人数教育」による「らせん型教育」システムの中に適切に配置し,実践していくものである。このような取組の実践により,1) 学生は,実社会における課題,その解決のための方策・技術の工学的探求の必要性,そして課題解決策の企画・立案,合意形成などの過程を実体験でき,自ら考えることの重要性・必要性,得られた成果の積極的公表により社会貢献を実感できる。2) また,地域の身近な課題に関する実践的な活動を通して技術者の倫理に触れ,実体験の中から技術者の役割と責任を感じ取らせることができる。3) さらには,キャンパス内では決して経験できない実社会の中で自分の考えを的確に相手に伝えるコミュニケーション能力とプレゼンテーション能力の涵養が期待できる。
 このような教育効果は,ダイナミックに変化する社会の要請に応える実践的・創造的技術者の育成に大きく貢献する。また教育と研究は表裏一体であり,3つのプログラムの実践による成果は新たな研究課題の発掘にも繋がり,本学で構想中の「(仮称)地域連携まちづくり研究センター」の礎になり得る。
 地域活性化への貢献(プロジェクトの成果の効果):他方,本取組によるプログラムの実践は,様々な地域課題に対する学生による提案が成果物であり,学生の自由で独創的な発想による提案は,地域の自治体や住民,企業にとって正に新鮮なものであり,地域活性化のために地域(行政,住民,企業)が自ら考え,行動していく契機となり得る。と同時にその成果のいくつかはベンチャービジネス,コミュニティビジネスに発展していく可能性もあり,本学卒業生による地域の起業家育成にも貢献できることが期待される。
 またプログラム実践の課程における地域住民との協働作業は,市民の地域づくりに対する意識啓発にも寄与できる。
 他大学等への波及効果:地域をフィールドとする教育研究分野において,基礎と専門を交互に教育し,かつ技術科学と実学を効果的に連関させた学部・大学院の一貫教育システムとそれと連動した研究体制の確立,そして真の地域社会貢献が本取組の目標であり,これは地方の大学の工科系教育研究システムの一つのモデルとなり得ると考えている。